狭小住宅のメリットとデメリット|狭さをいかす7つの視点
都市部で土地から購入して住宅を建てようとすると、どうしても金銭的なハードルが高くなってしまいますね。一戸建てを諦め、マンションにするか、郊外に引っ越すか悩むこともあるでしょう。
しかし、狭小地を選択することで土地の購入価格が格段に抑えられますので、予算の範囲内で都市部に住宅を持てる可能性が高まります。
コロナ禍以降、地方に移住する人は多くなっていますが、都市には社会インフラが整っており、職場や学校、商業施設の選択肢も多様で、年代を問わず人気が高いことは依然変わっていません。特に近年は、夫婦のみや一人暮らし世帯が増えており、ミニマルライフを求める人たちが好んで選ぶ傾向も強くなってきています。
狭小住宅は、狭くて住みにくいと思われることも多く、もちろん実際の広さは変えようがありません。ただ、設計の工夫次第で、狭さを感じさせない、個々の生活スタイルにフィットする狭小住宅を建てることができます。
デメリットをメリットに変えていくことが、狭小住宅を計画する醍醐味ともいえるでしょう。
今回は、メリットとデメリット、その解消策も含めて紹介します。
狭小住宅を選ぶメリットとは
- 土地コストを抑えて都市に自分だけの住宅を
- 狭小だからこその良さ
- 設計
- 掃除
- 太陽光発電を活用、ZEH狭小住宅も可能
- ビルトインガレージで、利便性と快適性アップ
1.土地コストを抑えて都市に自分だけの住宅を
狭小住宅の最大のメリットは、土地購入費用を抑えられることです。利便性の高い都市部で、自分のライフスタイルに合ったこだわりの住宅で暮らせることは、マンションや賃貸物件にはない魅力ですね。
ランニングコストも一般的な広さの住宅と比べると安くすみます。建物自体が小規模ですから、光熱費や将来の修繕にかかる費用、保険や税金も比較的安く抑えられるでしょう。
2.狭小だからこその良さ
1.設計
狭小住宅を建てる場所は、自由設計でしか計画できない土地が大半で、限られた空間を最大限に活かせる設計の自由度が魅力。これは、ある意味コストが上がりやすいというデメリットでもありますが、制約の中で、ライフスタイルや価値観にあった家を建てることは、家づくりにおいて楽しみの一つです。
「光」「風」「空間の広がり」を意識して、住みながら良さを体感できる住宅にしましょう。
2.掃除
狭小住宅では、小さいからこそ、生活動線が無駄に長くならず、移動距離が短いため使いやすい間取りを実現できます。住まう人に合わせたミニマルな空間は、狭小であることに価値を宿すでしょう。
家を清潔、快適に保つために欠かせない掃除は、家事の中で案外時間を取られるタスクです。
室内の掃除に関しては、床面積が小さいので自然と短時間で終了します。
隣の住宅との距離が近く窓の設置も限られるケースでは、外壁や窓の掃除について、ほとんどしなくて済みますね。
外構や庭を設けにくい狭小住宅では、外回りの清掃もほぼ考える必要がありません。
3.太陽光発電を活用、ZEH狭小住宅も可能
狭小住宅でも、土地や周りの建物の条件次第では、太陽光発電の導入が可能です。建物が小さいので発電量は限られますが、消費量も共に少なく、断熱効果を高めることでZEH住宅にすることができます。ZEH基準の住宅では、光熱費の削減や快適な暮らしを実現できるメリットがあります。
また、ZEH Orientedは、都市部などZEH要件を満たすことが難しい地域が考慮されており、太陽光発電を設置できないケースでもZEHの対象となります。都市部の狭小住宅では活用できるケースも多いので、検討してみるといいでしょう。
ZEH住宅の建築コストは高くなりますが、住宅ローン減税をはじめ減税や補助金など優遇措置を受けられるメリットもありますよ。
4.ビルトインガレージで、利便性と快適性アップ
狭小住宅の1階を駐車スペースにすることで、駐車場代がかからないメリットは容易に想像できるでしょう。
他にも、車の盗難が予防でき、駐車場までの移動時間がゼロになること。乗降の際に雨に濡れない、重い荷物の出し入れがしやすくなるなど、ちょっとしたことですが、日々の生活の中でのストレスを軽減できます。
自転車やアウトドア用品の収納場所としても活用でき、狭小地で設置場所に困りがちなエコキュート設備やエアコンの室外機などが設置しやすい点も見逃せません。
広さにもよりますが、人気のガレージハウスにすることで、1階を遊び心あふれる空間にデザインできるでしょう。
狭小住宅のデメリットと解決策
- 上下移動の負担
- 採光や風通しが悪くなるリスク
- 建築コストの増加
1.上下移動の負担
都市型の狭小住宅では、2階以上、4階建てになるケースがあります。縦に長い構造だと上下の移動が増えることは避けられません。
今、平屋が人気の理由には上下移動がないという点があります。
高齢者や小さな子供がいる家庭では上下移動は負担になりやすいので、ホームエレベーターの導入を検討することが一つの解決策となるでしょう。
しかし、ホームエレベーターの設置費用は300万~500万円ほどかかります。また、設置費用だけでなくメンテナンスなど、ランニングコストがかかり続ける設備で、耐用年数も25年ほどとされています。
小さな子供がいる家庭は外出時の荷物が多く、階段の上り下りには労力を要しますが、収納や動線の計画を見直し、快適に外出できるよう工夫できます。
高齢者にとっても、日々の家庭内での階段の上り下りは、筋力維持にとって適度な運動とも言えます。
知っておくと良い点は、ホームエレベーターは、必要になった時に後から設置することが可能な設備ということです。
畳1畳分ほどの広さがあれば施工できるので、3階建て以上になる住宅には、新築の計画段階から、ホームエレベーターの設置場所を、吹き抜けや収納として確保しておくとよいでしょう。
設置場所が計画されていれば、将来必要になった時に小規模な工事で設置できますよ。
2.採光や風通しが悪くなるリスク
隣家との距離が近く、細長くなりがちな狭小住宅は、採光や風通しに工夫が必要な場合が多くあります。
天窓や吹き抜けは、明るい光を取り込み自然な空気の循環を生んでくれるでしょう。光と風を遮らないよう間仕切りを少なくすれば、見通しのいい空間が広がり、狭さを感じさせません。
可能であれば中庭を設けることで、プライバシーを守りながら光と風を取り入れ、「内に開いた空間」ができます。
土地や建物からの制約を感じない住宅づくりのキーワードは「光」「風」「空間の広がり」です。
3.建築コストの増加
狭小住宅は、複雑な設計や施工が必要なため、一般的な住宅よりも坪単価が高くなる傾向があります。しかし、土地購入費やランニングコストが抑えられるので、総合的なコストでみると割高とはいえません。
太陽光発電を設置したり、長期優良住宅やZEH基準に適合させることで、建築費は嵩みます。しかし、長期的に光熱費を削減し、結果として、健康的で快適なコストパフォーマンスに優れた住まいが実現できるでしょう。
狭小住宅は、土地の取得費用を抑え、都市部でオリジナリティーあふれる住宅に住める魅力があります。狭小住宅の特徴を最大限に活かし、自分のライフスタイルにあった家づくりを楽しんでください。