熊本地震の教訓から学ぶ:2025年建築基準法改正と木造住宅の耐震性強化

近年規模の大きい地震が多く発生していますが、2016年の熊本地震が記憶に残っている方は多いのではないでしょうか?震度7を2回も記録し、最初の大きな地震の後にさらに強い地震が続いたため、「余震」という概念が見直された地震でもあります。
熊本地震では新耐震基準にもとづいて建てられた住宅にも多くの被害が発生し、建築業界では地震に備える耐震性が重要であることが再認識される契機となったのです。
本記事では、2025年4月からの建築基準法の変更点を中心に、新しい建築物の区分、そしてこれらの変更が木造住宅の耐震性向上にどのように寄与するかについて解説します。
また、熊本地震から得られた教訓と、それが今回の法改正にどのように反映されているかについても触れていきます。

熊本地震の教訓と木造住宅の耐震性強化

熊本地震では、1981年6月1日から施行されている耐震基準に基づいて建てられた木造住宅にも倒壊や損傷が見られました。また、2000年以降の新耐震基準に基づいて建てられた木造住宅でも倒壊した住宅があったのです。
これらの事例は、日本全国で建てられている木造住宅の耐震性を再評価するきっかけとなり、今回の建築基準法の見直しの契機となっています。

熊本地震からの教訓

耐震基準の見直し

新耐震基準に基づいた住宅でも、大規模な地震に耐えるには限界があり、基準をクリアできているかしっかりと把握できる制度にする必要があります。

補強計画の重要性

既存住宅が大規模な地震に耐えるためには、耐震補強が必要であることが再認識されました。

地域ごとの特性を考慮する

地域ごとの地盤条件や風荷重、積雪荷重などを考慮した設計が必要なことが、地震後に改めて具体的に認識されました。

これらの教訓を受け、建築基準法が改正され、木造住宅の耐震性を強化する新規定が設けられました。

2025年4月建築基準法改正—新2号建築物と新3号建築物が新設

建築基準法第6条1項にある従来の4号特例による建築確認・検査の省略は、一定条件以下の小規模な建物の手続きの簡素化を図るためのものでしたが、2025年4月から施行される建築基準法改正により、従来の4号特例が変更され、新たに「新2号建築物」と「新3号建築物」になります。これに伴い、4号建築物という名称はなくなります。
これは、施工棟数が多く、従来まで4号特例が適用されていた一般的な木造2階建て住宅が「新2号建築物」となる改正ですので、住宅を建築する施工者や多くの施主の方々にも影響がある法改正となっています。

出典:国土交通省|小規模の木造住宅・建築物の構造基準が変わります

新2号建築物

改正後は、木造2階建てと延べ面積200平方メートルを超える平屋は「新2号建築物」に分類されます。
新2号建築物は、都市計画区域内外を問わず、すべての地域で建築確認と検査が必要となり、審査省略制度の対象外となります。

新3号建築物

一方、延べ面積200平方メートル以下の平屋は「新3号建築物」に分類されます。都市計画区域内では建築確認と検査が必要ですが、審査省略制度の対象となります。
今回取り上げていませんが、省エネ基準への適合化も義務化されます。

2025年4月建築基準法改正—新規定の実務変更点と工事開始前の準備
これまでの4号建築物だった規模でも、新2号建築物になる住宅は相当数該当します。新2号建築物は、構造等の審査を行う必要があるため、構造関係の図面および計算書が必要となります。

出典:国土交通省|小規模の木造住宅・建築物の構造基準が変わります

提出書類の増加

新2号建築物では、以下の図書が必要です。

  • 構造関係の図面および計算書
  • 省エネ性能を示す図面または判定通知書

これまで省略できた図面や計算書は、新2号建築物では省略できません。提出漏れを防ぐため、チェックリストや管理システムが必要になるケースもあるでしょう。

審査プロセスの変更

  • 審査期間: 確認審査の法定期間が「7日以内」から「35日以内」に延長されるので、工事の着手までに余裕を持ったスケジュールで申請する必要があります。
  • 検査項目の拡大: 構造や省エネ性能に関する検査がこれまでより厳格になります。

施行日と注意点

2025年4月1日以降に工事に着手する場合に、新しい規定が適用されます。施行日前には申請が混み合うことが予想されるので、早めの準備と申請が必要です。

2025年4月建築基準法改正—小規模木造建築物の構造基準が厳格化

この改正は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)等の省エネ住宅の普及により建物が重量化していることに対応するためのもので、壁量や柱の小径について新たな基準が適用され、確認方法も多様化します。
従来の4号特例の対象だった建物(階数2以下かつ延べ面積500平方メートル以下の木造建築物)と比べると、対象となる建物の範囲が広くなっており、一般的な木造住宅も含まれてくることになります。

対象となる建物

2階建て以下、高さ16メートル以下、延べ面積300平方メートル以下のすべての小規模木造住宅・建築物が含まれます。

構造基準の見直し

壁量計算(令第46条)と、柱の小径(令第43条)に関する規定が見直されます。
省エネ化による建物の重量増加に対応するため、ZEH水準等の建築物という区分が新設され、多雪エリアにおける規定も加えられました。

確認方法

新しい構造基準を満たしているか確認する方法は以下の3つです。

  • 算定式(表計算ツール):建物の荷重に応じて必要な壁量や柱の小径を算出します。
  • 早見表:簡易的に必要な壁量や柱の小径を確認できる早見表を使用します。
  • 構造計算: 許容応力度計算などを行い、安全性を確認します。この場合、壁量や柱の小径の確認は省略可能です。

これら改正相互関連しており、第6条改正でより多く小規模木造建筑物確認申請対象となり、第43条・第46条改正で構造安全性基準厳格化します。そして確認申請時には改正された第43条・第46条適合示すこと求められます。

2025年4月から適用される建築基準法改正によって木造住宅耐震性具体的でわかりやすく、安全性高まります。一番安全な場所であってほしい住宅安心安全な場所になるためには改正趣旨理解し対応していく必要があります。