CLTの未来と課題1. -CLTの概要-

提供:一般社団法人日本CLT協会

「CLTの未来と課題」と題して、数回にわたり、連載記事をお届けしたいと思います。
まずは、CLTの概要についておさらいし、次回からは少しずつ踏み込んだ内容をお伝えしていきたいと思います。

CLT(Cross Laminated Timber、クロス・ラミネーテッド・ティンバー)は日本語では「直交集成板」といい、日本語の通り、木材を直交に積層接着したパネルで、強度と安定性が高い建材です。複数の層を交互に直交させることで、木材の弱点である収縮や膨張を抑え、強度を増しています。この構造により、CLTは大規模な建築物にも使用可能であり、従来の木造建築の限界を超えることができます。そんなCLTは木造建築の革新的な建築材料として注目を集め、環境負荷の低減と建設工期の短縮を実現する一方で、いくつかの課題も抱えています。

CLTの製造過程では、木材を薄い板状に加工し、それを直交に積層して接着します。この積層構造により、CLTは高い剛性と耐久性を持ち、地震や風などの外力に対しても優れた耐性を発揮します。また、CLTは工場でのプレファブリケーションが可能であり、現場での施工時間を大幅に短縮することができます。これにより、建設コストの削減や工期の短縮が期待されます。

さらに、CLTは環境に優しい建材としても注目されています。木材は二酸化炭素を吸収し、炭素を固定する特性があるため、CLTを使用することで建築物の炭素フットプリントを削減することができます。また、CLTは再生可能な資源である木材を利用しているため、持続可能な建築材料として評価されています。

CLTの用途は多岐にわたり、住宅、商業施設、公共施設など、さまざまな建築物に使用されています。特に、木材の温かみや自然な風合いを活かしたデザインが可能であり、居住空間の快適性を向上させる効果があります。また、CLTは防火性能にも優れており、適切な設計と施工により、高い耐火性を持つ建築物を実現することができます。

地域林業の活性化への貢献も期待されています。CLTの需要が増えることで、地域の林業が活性化し、地元経済の発展にも寄与すると考えられています。これにより、森林の適切な管理が促進され、持続可能な森林資源の利用が進むことが期待されています。

このように、CLTは強度、耐久性、環境性能に優れた建材として、現代の建築において重要な役割を果たしています。今後も技術の進歩とともに、さらに多くの分野での活用が期待されており、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。

しかし、CLTにはいくつかの課題も存在します。例えば、コストの問題や、施工における技術的な課題、そして防火性能のさらなる向上が求められています。設計基準や施工技術の標準化の遅れ、防火性能に関する規制への対応、国内供給体制の整備などの課題もあります。これらの課題を克服するためには、技術開発や法規制の整備、供給体制の強化が必要です。

次回からは、CLTの具体的な特性や活用方法について、さらに詳しく掘り下げていきます。また、これらの課題をどう克服できるかを一緒に検討していけたらと思います。