CLTの未来と課題2. -CLTと合板・集成材との違い-

「CLTの未来と課題」と題した連載記事の2つ目をお送りしたいと思います。前回は大まかなCLTの概要をお伝えしましたが、今回はCLTと合板・集成材との違いについてお伝えしたいと思います。
CLTと合板・集成材に共通するのは、木材を加工することで用途に応じて木材の特性を活かしたり、弱点の部分を補完する点です。接着の方向と部材の厚みが違うことによって、それぞれの特性と使われ方に違いがあります。
合板との違い
合板はCLTと似た作りになっており、板を繊維方向を交互に配置して接着した材料であることは共通しています。大きな違いは、接着する板の厚みです。合板は原木をロータリーレースという機械で大根の桂むきのように薄く剥いた単板(ベニア)を接着しているのに対して、CLTは20mm〜45mm程の厚みの引板を接着しています。この違いにより、合板とCLTでは強度の特性が異なり、使用される用途も異なります。合板は主に壁や屋根などの軽い構造物に使用される一方、CLTは壁や屋根の他に床、梁や柱といった主要構造部にも使われています。
合板は、軽量で加工しやすいという特性から、住宅の内装材や家具の製造にも広く使用されています。特に、合板はコストパフォーマンスが高く、短期間で大量生産が可能なため、経済的な選択肢としても人気があります。一方で、CLTはその高い強度と耐久性から、より大規模な建築物や構造物に適しています。例えば、CLTは中高層ビルや公共施設、商業ビルなどの主要構造部材として使用されることが増えています。
合板はまた、耐水性や耐久性を向上させるために、特殊な接着剤やコーティングが施されることが多いです。これにより、合板は湿気や虫害に対する耐性が向上し、長期間にわたって使用することが可能です。さらに、合板はリサイクルが容易であり、環境に優しい材料としても評価されています。
集成材との違い
集成材との共通点は、厚みのある木材を貼り合わせて作られる点です。しかし、CLTとの大きな違いは繊維方向を揃えるか交差させるかの違いです。集成材は複数の引板の繊維方向を揃えて積層してあり、主に柱や梁などの軸材として使用されます。一方、CLTは繊維方向を交差させて積層してあるため、縦横どちらの方向にも高い強度を持ち、床や壁などの面材としても使用可能です。
集成材は、木材の自然な美しさを活かしつつ、高い強度と耐久性を持つため、住宅や商業施設の柱や梁として広く使用されています。また、集成材は加工が容易であり、さまざまな形状やサイズに対応できるため、デザインの自由度が高いという利点もあります。一方、CLTはその異方向性の構造により、地震や風などの外力に対しても優れた耐性を持つため、耐震性や耐風性が求められる建築物に適しています。CLTも集成材同様木材の自然な美しさを持っている為、構造材を仕上げとして使用する事例が多くあります。
集成材はまた、製造過程での品質管理が厳格に行われており、均一な品質を保つことができます。これにより、集成材は高い信頼性を持ち、長期間にわたって安定した性能を発揮します。さらに、集成材はリサイクルが容易であり、環境に優しい材料としても評価されています。
CLTの特徴のおさらい
CLTは、異方向性を持った構造材として、高い強度を持ち、多くの用途に対応可能な構造用部材です。これからの建築において重要な役割を果たしていくと考えられます。具体的には、以下のような特徴があります:
高い強度:縦横両方向に強度を持つため、さまざまな構造部材として使用可能。
多用途性:壁、床、屋根、梁、柱など、建物の主要な構造部材として利用できる。
施工の効率化:大きなパネルを使用することで、施工期間の短縮が可能。
環境に優しい:木材を使用することで、二酸化炭素の吸収や再生可能資源の利用が促進される。
これらの特徴により、CLTは現代の建築において重要な役割を果たしています。特に、持続可能な建築材料としての評価が高まっており、環境負荷の低減や資源の有効活用に貢献しています。今後もCLTの利用が広がり、より多くの建築物でその優れた特性が活かされることが期待されています。