「空き家法改正」で高まる住まいの可能性-増税リスクを回避するための対策

1. 背景にある空き家の深刻化

日本各地では、人口減少や高齢化、都市部への一極集中などに伴い、使われない家が放置される「空き家」問題が深刻化しつつあります。誰も住まなくなった建物を長期間管理せずに放置すると、老朽化や倒壊リスクが高まるだけでなく、防犯・衛生面でも地域社会に負担をかける可能性が指摘されています。こうした課題を解消するために制定された「空き家対策特別措置法」は、2023年に一部が改正されましたが、今後のさらなる改正によって行政の指導や税制上の措置が一段と強化される見通しです。

2. 固定資産税が約3倍になるリスク

1.優遇措置の解除

従来、住宅用地には軽減税率が適用され、固定資産税が低めに設定されていました。しかし、特定空家等とみなされた場合や適切な管理がされていない場合には、優遇措置が外れて税額が一気に上昇する可能性があります。

2.増税強化の動き

今後の改正では、空き家を長期間にわたり改善しない所有者に対して、通常の固定資産税よりさらに高い税率を適用する案が検討されています。具体的には最大で約3倍にまで跳ね上がるケースも想定されており、所有者が何も手を打たないままでは負担が急増するリスクが避けられません。

3. 所有者に求められる早期対応

1.建物の現状把握

空き家の所有者は、まず建物が危険な状態になっていないか、法的に問題を抱えていないかを専門家に相談すると安心です。構造や設備の劣化状況を調査しておくことで、今後の対応方針が立てやすくなります。

2.リノベーション・リフォーム

耐震性や断熱性能の向上を含むリフォームを行い、住宅やテナント物件として再活用する選択肢もあります。自治体によっては補助金や助成金が用意されている場合もあるため、資金面を含めて情報を収集することが大切です。

3.解体や土地活用

建物の老朽化が著しく、改修コストが大きすぎる場合には、解体して更地にする選択肢も検討されます。その際、駐車場や小規模店舗、家庭菜園用の貸し農園など、さまざまな形での土地活用が考えられるでしょう。

4. 建築業界に広がるビジネスチャンス

1.総合的なコンサルティング需要

設計事務所や工務店、ハウスメーカー、ゼネコンの設計部などにとって、空き家の活用ニーズが高まるのは大きなチャンスです。単なるリフォーム提案だけでなく、耐震改修やデザイン性の高いリノベーションなど、幅広い知識を活かしたコンサルティングが求められます。

2.地域との連携による開発

既存の街並みや地域の歴史を生かした空き家再生プロジェクトが注目を集める動きもあります。行政や地域住民との協働によって、単なる建物改修ではなく観光やコミュニティ活性化につながる取り組みを展開する例も増えています。

5. これからの住まいの可能性

法改正の影響で、空き家を放置したままにしておくことのデメリットはより一層大きくなると予想されます。一方で、老朽建築をリノベーションして新しい住宅や店舗を生み出す動きは、まちづくりや地域活性化の観点でも高い期待が寄せられているのが現状です。固定資産税の増税リスクを回避するためにも、空き家の状態を見極め、どのような形で再生・活用できるかを早めに検討することが鍵になるのではないでしょうか。