CLTの環境影響負荷に関して

1. ライフサイクルアセスメントの視点を通じた考察
「CLTの未来と課題」と題した連載記事の5回目として、本日は「CLTの環境影響負荷に関して1」についてお届けします。前回の記事「なぜCLT普及は推進されるのか」では、持続可能な開発目標(SDGs)やCO2削減の観点からCLT普及が推進されている理由を記載しました。しかし、本当にCLTの環境負荷が低いのか、ライフサイクルアセスメント(LCA)の視点を通じて考察してみたいと思います。
2. ライフサイクルアセスメント(LCA)のおさらい
ライフサイクルアセスメント(LCA)は、製品の環境影響を総合的に評価する手法です。LCAには、製品のライフサイクル全体を通じて行われる評価が含まれます。具体的には、資源採取、製造、使用、廃棄までのすべての段階で発生する環境影響を定量化します。LCAの評価方法としては、インベントリ分析(LCI)とインパクト評価(LCIA)があり、それぞれの段階でデータを収集し、環境影響を定量化します。評価対象としては、温室効果ガスの排出量、エネルギー消費量、水資源の使用量などが含まれます。
LCAと似た指標としてカーボンフットプリント(CFP)が挙げられます。CFPは温室効果ガス排出量に特化しており、LCAの包括的評価とは異なりますが、両者ともライフサイクル全体を通じた環境影響を評価する点では共通しています。
包括的評価が可能なLCAでは評価軸を任意に選択できるため、特定の環境影響(例:水資源の使用)に焦点を当てることが可能です。しかし、これにより他の重要な環境影響が見落とされる可能性があるため、評価結果が恣意的になるリスクがあります。従って、LCAを実施する際には、評価軸の選定が重要なポイントとなります。
ちなみに、LCAのはじまりは1969年に米国コカ・コーラ社が自社の飲料容器に対する環境影響評価を行ったことが起源だと言われています。
3. CLTのライフサイクルアセスメント
資源採取のプロセス
資源採取では、木材の伐採とその後の管理が重要です。適切な再造林が行われない場合、森林減少や生態系への影響が懸念されます。また、伐採や運搬にはエネルギーを要し、温室効果ガス排出も発生します。
材料の製造プロセス
CLTの材料の製造プロセスには、製材、輸送、加工、接着などが含まれます。これらのプロセスには、それぞれ環境負荷が伴います。例えば、製材に必要なエネルギーや、水の使用、製造過程で排出される廃棄物、輸送にかかる燃料、接着に使用される化学物質などが挙げられます。これらの副資材の環境負荷も考慮しなければなりません。
使用のプロセス
使用時には、建物の断熱性や空調負荷が環境影響に大きく関与します。CLTは断熱性能が高いものの、適切な設計が施されなければ空調エネルギーの消費が増加する可能性があります。
破棄のプロセスと再利用の可能性
CLTの再利用には可能性と課題が共存しています。CLTの多くの接合部がボルト・ドリフトピンで接合されているため、構造躯体にダメージを与えることなく解体することが可能とされています。しかし、木造の再利用には課題が残ると考えられます。特に接着剤の劣化や木材の経年変化により再利用が困難な場合もある為です。