標準機能だけで作る!VectorWorksによる3Dパース作成法

目次
1. はじめに|なぜ“標準機能だけ”なのか?
建築設計やインテリアデザインの現場では、3Dパースによって空間の完成イメージを施主や関係者に伝えることが一般的です。VectorWorksはそのための強力なツールですが、多くのユーザーは「外部レンダラーが必要」「高機能なプラグインがなければリアルなパースは作れない」と思い込んでいないでしょうか?
実は、VectorWorksの標準機能だけでも十分に実用的な3Dパースが作成できます。外部ソフトに頼らないメリットは、コスト削減や操作の簡略化だけでなく、ファイル互換や社内運用の安定性にもつながります。
本記事では、追加費用ゼロ・インストール不要の“標準機能縛り”で、プレゼン資料として通用するレベルの3Dパースを作る方法を丁寧に解説していきます。
2. 準備編|3Dパース作成に必要な基本設定
3Dパースのクオリティは、モデリング前の「準備段階」で大きく左右されます。以下のポイントを押さえておくと、後工程がスムーズになります。
● 設計レイヤーとビューの構成
まず、設計レイヤー(Design Layer)を「基礎」「外壁」「内装」などに分けておくことで、モデルの管理が格段にしやすくなります。3Dビューで確認しながら作成できるように、「アイソメ図」や「透視図」ビューを保存しておくのも有効です。
● 単位とスケールの設定
プロジェクトの初期段階で、図面単位(mmまたはcm)と縮尺(1/50や1/100など)を明確に設定しておきましょう。異なるスケールでのモデリングは、寸法ズレやレンダリングエラーの原因になります。
● デフォルトスタイルの確認
壁・ドア・窓などのツールでは、VectorWorksが持つデフォルトスタイルを活用できます。既存のスタイルをベースに、オリジナル要素だけを編集すれば効率的です。
3. モデリング編|標準ツールだけで建物モデルを作る方法
ここでは、VectorWorks標準ツールを使った基本的な建物モデリングの手順を紹介します。
● 壁・床・屋根の作成
- 壁ツール:平面図を描いたあと、標準壁スタイルを使って厚みと高さを設定します。
- 床ツール:矩形やポリゴンで範囲を指定し、床厚と仕上げを設定。
- 屋根ツール:勾配屋根は自動生成ツール、陸屋根は押し出しツールを活用。
● 開口部(窓・ドア)の挿入
- 窓ツール/ドアツールで壁に直接配置可能。
- サイズや仕様はオブジェクトインフォで細かく調整できます。
- 開口部の3D表示にこだわるとパースのリアル感が大幅に向上します。
● 複雑な形状の対応
標準の「押し出し」や「回転体」ツールを駆使すれば、梁型・庇・階段なども自作できます。ブーリアン演算(加算・減算)も有効です。
4. 視点設定編|効果的なカメラアングルの取り方
3Dパースの印象は、「視点=カメラアングル」によって大きく変わります。
● パースビューの作成
- 「透視投影」に切り替え、カメラ位置と目線高さを設定します(例:1.5m)。
- 「カメラマッチング」ツールを使えば、写真と合成することも可能です。
● アングルの工夫
- 斜め45度+俯瞰(鳥瞰)視点が全体像を伝える定番アングル。
- 低めのアングルで撮ると空間が広く見える効果も。
- 人の視点で見た「1.5m~1.8m高さ」での表現が一番リアリティがあります。
5. 仕上げ編|マテリアル・影・光源の設定でリアル感を出す
モデリングが完成したら、パースとしての完成度を高めるための“仕上げ”が重要です。
● マテリアル設定
- 「テクスチャ」機能を使って、壁・床・屋根に素材感を追加。
- 素材のスケールや角度を調整することで、より自然な見た目になります。
● ライティング設定
- 光源ツールを使い、太陽光や照明をシーンに追加します。
- 「シャドウ(影)」の方向と強さでリアルさが変わります。
● レンダリングスタイル
- 「OpenGL」でも十分綺麗な出力が可能。
- 「レンダーワークススタイル(RW)」の中から「写実的」や「白モデル風」を選ぶと雰囲気が出せます。
6. 出力編|パース画像の書き出しとプレゼン資料への活用
完成したパースを効果的に活用するためには、適切な出力形式と利用方法が重要です。
● 画像出力
- メニュー「ファイル」>「書き出し」>「画像ファイル」からJPEGやPNGで書き出し。
- 解像度は300dpiで出力しておくと、印刷用資料にも耐えます。
● 資料への活用
- VectorWorks内でプレゼンボードを作成(シートレイヤーを利用)。
- PowerPointやPDF資料にも貼り付け可能。
- 手描き風のフィルターやスケッチ風出力もプレゼン効果を高めます。
7. まとめ|標準機能の限界と活かし方
VectorWorksの標準機能だけでも、**「見せるパース」**は十分に作成可能です。もちろん、Cinema 4DやLumionなどの高機能レンダラーを使えばさらに写実的な表現も可能ですが、多くの実務現場では「伝える力」こそが求められます。
標準機能を徹底的に使いこなすことで、操作の習熟度が高まり、効率的な設計プロセスが実現できます。まずは今ある機能を最大限活用し、その上で必要に応じて外部ツールを検討する、というアプローチがコストとクオリティのバランスを保つ最善の道と言えるでしょう。