RC設計で最も手間がかかる『躯体図』作成をラクにする方法

1. はじめに:なぜRC設計において「躯体図」が最大の手間となるのか

鉄筋コンクリート(RC)造の設計業務の中でも、「躯体図」の作成は最も手間と労力を要する工程のひとつです。躯体図は、柱・梁・スラブ・壁などの構造体の配置、寸法、断面、レベル、開口などを詳細に示す図面であり、施工現場にとっても極めて重要な設計図面です。

他の図面と比べて煩雑である理由は、情報量の多さと他図との整合性の複雑さにあります。一つの記載ミスが施工ミスや工程遅延に直結するため、高い精度と整合性が求められるのです。


2. 躯体図作成における“よくある課題”とは

他図面との整合性ミス(意匠図・構造図)

躯体図は意匠図との整合が必要不可欠です。特に開口寸法や位置、スラブ段差、階高などが構造計画とずれてしまうと、設計変更や現場対応に追われることになります。

寸法・レベル・符号の記載漏れ

部材の幅・厚さ・レベル、通り芯、スリーブ開口など、ひとつでも抜け漏れがあると施工側で混乱を招きます。

現場や施工者からの問い合わせが多い原因

「どこまでが壁で、どこからが開口か」「レベルの基準はどこか」といった、図面から読み取りにくい表現や曖昧な記載も、問い合わせの原因になります。


3. 躯体図をラクにするための前提整理

作図前に確認すべき設計条件と基準類

  • 建物の構造種別・使用材料(RC、SRC)
  • 耐震等級や断面設計基準
  • 建築基準法・構造計算書の条件整理

これらを事前に押さえておくことで、作図途中での仕様変更や手戻りを最小限に抑えることができます。

作図ルールとレイヤー設定の標準化

  • 通り芯、躯体、文字、寸法などを明確に分類したレイヤー構成を事前にテンプレート化
  • 符号・記号の共通ルール化により、図面間の整合性を高める

過去図面のテンプレート活用術

同種・同規模の建物であれば、過去の躯体図テンプレートを流用・修正することで作業時間を大幅に短縮できます。


4. 作図効率を上げる実践テクニック

部材記号や通り芯の一括管理

部材符号・通り芯のずれを防ぐには、共通ファイルで一元管理することが重要です。CAD上での“参照ファイル”機能を活用するのも効果的です。

マクロ・スクリプト・ショートカットの活用

Jw_cadやAutoCADには、繰り返し作業を自動化するマクロやスクリプト機能があり、寸法記入や凡例配置などの効率化に役立ちます。

CADソフトの特性を活かした作業分担

  • 複雑な梁伏図は熟練者が担当
  • スラブ記号や寸法記入は若手でも対応可能
  • 「全て1人で描く」のではなく、役割分担とチェック体制を導入しましょう

5. 躯体図をアウトソース・分業化するという選択肢

外注化のメリットとリスク

  • メリット:社内のリソースを効率的に配分でき、繁忙期でも対応可能
  • リスク:図面の品質が外注先のスキルに依存する

図面アウトソーシングを行う場合は、作図仕様書やチェックリストの整備が欠かせません。

分業体制の構築とチェックルールの整備

複数人で作業を行う場合は、作図基準・命名ルール・更新履歴の管理方法を明文化し、誰が見てもわかる体制をつくることが大切です。

BIM連携やクラウド型図面管理の活用

  • RevitなどのBIMソフトでは、意匠・構造情報を統合管理できるため、整合性ミスのリスクが激減します
  • クラウドベースの図面共有ツール(例:Bluebeam, Dropbox, Box)で、設計チームと現場がリアルタイムに図面を共有可能

6. まとめ:煩雑な躯体図を「再現性のある効率化」で乗り越える

RC設計における躯体図作成は、単なる作業ではなく精度・整合性・スピードのすべてが問われる工程です。

だからこそ重要なのは、「属人的な職人技」ではなく、再現性のある仕組み化・効率化です。

  • テンプレート・ルール・マクロの活用
  • 過去データとノウハウの蓄積
  • チーム全体での情報共有と作業分担

これらを組織的に実践することで、煩雑な躯体図も確実に「ラク」にすることができます。