山留・掘削工事でコストを抑える施工管理の秘訣
目次
1. はじめに:なぜ今、山留・掘削工事のコスト管理が注目されるのか
近年、建設現場における資材価格の高騰や人手不足の影響で、工事コストは上昇の一途をたどっています。とくに山留・掘削工事は仮設工事であるにもかかわらず、高額な仮設材や重機、人件費が必要となり、コスト管理が極めて重要です。
現場では「見えないコスト」、すなわち再施工・手戻り・余剰資材・重機の待機時間といった無駄が発生しやすい工程です。こうした無駄をいかに最小限に抑えるかが、施工管理者にとっての重要課題となります。
2. 山留・掘削工事の基礎知識と代表的な工法
山留工事とは?
山留工事は、掘削時に周囲の地盤崩壊や地下水の浸入を防ぐ仮設工事です。主な工法には以下があります。
- 親杭横矢板工法:比較的小規模な掘削に有効。コストが低く、施工も早い。
- 鋼矢板工法:地下水対策に強く、中規模〜大規模工事向き。
- SMW(ソイルセメント連続壁)工法:支持力と止水性を兼ね備えるが、高コスト。
掘削工事の流れと注意点
掘削工事は、表層処理→山留設置→掘削→支保工設置→基礎施工という流れが一般的です。深掘りになればなるほど支保工の管理が重要となり、工程遅延や安全リスクの増大にも直結します。
工法選定がコストと工程に与える影響
工法の選定は、コスト・工期・施工難易度に直接関わります。過剰スペックの工法を選べばコスト増、簡易工法を選べば後のトラブルによる損失も。設計段階での適正判断が必要不可欠です。
3. コストを左右する要因とは?事前準備と設計段階での工夫
土質・地下水・周辺環境の事前調査
適切な調査は、無駄な補強や不適切な工法選定を避ける鍵です。地盤のN値、地下水位、隣地構造物への影響などを調査報告書やボーリングデータで詳細に把握しましょう。
地盤条件に応じた山留・掘削計画の立案
例えば、自立可能な粘性土であれば親杭横矢板で十分なケースもあります。過剰な支保工設置や不要な水替工を防ぐ計画が、コスト抑制に直結します。
設計者・地盤業者との連携による設計最適化
施工者が設計段階から関与する「施工計画型設計(コンストラクタビリティの追求)」は、コストパフォーマンスの高い設計を生みます。VE(バリューエンジニアリング)提案も積極的に。
4. 現場で実践すべきコスト削減の具体策
材料の選定と再利用計画の策定
- 鋼矢板やH鋼のリース管理
- 矢板の転用計画の事前立案
- 損傷や過剰掘削による材料廃棄の防止
これらが直接的なコスト削減に結びつきます。
小割計画や掘削工程の効率化
土量管理の精度が低いと運搬コストが膨らみます。土量の三次元計算、ICT施工、3D地形モデリングなどを活用し、無駄な掘削や盛土を防ぎましょう。
山留支保工の段取りと撤去タイミングの最適化
支保工の設置・解体回数を最小限にする段取りが肝です。タイミングを誤ると養生期間のロスや他業種との干渉が発生します。
5. トラブルを防ぐための施工管理ポイント
地盤崩壊・湧水・周囲地盤沈下のリスク管理
- 山留壁の変位監視(計測)
- 井戸工法・ウェルポイントの適切運用
- 周辺建物との離隔距離の確保
など、リスク管理の徹底が手戻りを防ぎます。
モニタリングと日常点検の徹底
変状が起こってからの対応は高コストです。定期的な点検と数値モニタリングにより、異常兆候を早期に発見しましょう。
工期遅延・再施工を防ぐ品質管理術
- 記録写真の徹底
- コンクリート打設面の清掃・養生
- 山留材の取り扱い指導 など
小さな管理の積み重ねがコストと品質の両立を生むのです。
6. 成功事例に学ぶ!コスト削減に成功した現場の工夫
省力化設備を活用した効率化事例
油圧式山留圧入機による騒音・振動を抑えた施工により、周辺住民からのクレームを回避し、夜間作業や工期短縮が可能となった事例。
プレキャスト材の活用と現場省力化
掘削底面の捨コン・捨て型枠などにプレキャストを導入し、作業時間と型枠材コストを削減。
現場スタッフの創意工夫による改善例紹介
仮設通路の位置見直しにより重機の旋回回数を削減した例や、現場用アプリによる工程共有で人員待機をゼロにした事例など。
7. まとめ:コスト削減と安全・品質のバランスを取る施工管理のあり方
山留・掘削工事におけるコスト管理は、「削る」ことだけでなく「防ぐ」ことが本質です。短期的なコストダウンにとらわれず、品質と安全を守る長期視点が必要です。
設計段階から現場施工まで一体となった**「統合型施工管理」**を進めることで、無駄を省き、施工品質を高めることができます。これからの施工管理者には、現場力だけでなく、設計理解とマネジメント能力も求められます。