RCマンション躯体完了を効率化する配管・配線の段取り術

1. はじめに:なぜRCマンションで「先行配管・配線」が躯体完了のスピードを左右するのか

RCマンション工事における「躯体完了」は、構造体の施工を終え、内装・設備へ本格的に移行する重要な転換点です。この工程において、打設前に実施される先行配管・配線の段取りは、スムーズな進行と品質確保を大きく左右します。

特に近年は、設備の複雑化や納まり精度の要求が高まっており、スリーブ・インサートの計画的配置が不可欠です。段取り不足による手戻りやコア抜きが発生すれば、コストと工期の両面に悪影響を及ぼします。


2. RC構造における配管・配線の特徴と留意点

RC構造では、コンクリート打設前の段階で設備系統の“仕込み”が完了していることが求められます。打設後の変更は困難で、施工不良はそのまま品質リスクに直結します。

主な施工要素:

  • スリーブ:排水、電気、空調等の配管・配線通過部にあらかじめ設ける貫通孔。
  • インサート:天井配管・吊ボルトの固定に必要な金具。後付け不可な箇所も多い。
  • CD管・PF管:通線用保護管として打設前に埋設。

留意点:

  • スリーブ忘れ → コア抜き対応で強度低下、後工程に影響
  • 配線ルート未確認 → 電線通らず天井裏工事が煩雑化
  • インサート位置ミス → 吊ボルト位置ズレで天井納まり不良

3. 事前段取りの極意①:設計段階での納まり調整とBIM活用

現場での施工精度を高めるには、**設計段階での“納まりの詰め”**が不可欠です。

設計・構造の連携

  • 設備設計者と構造設計者の図面段階での連携強化
  • 例えば、スリーブが梁の主筋と干渉する事例は設計側での事前調整で回避可能

BIMの活用

  • BIMを活用すれば、スリーブやインサートの3D配置による干渉チェックが可能
  • 各設備業者との合意形成にも有効

施工図精度の向上

  • 実施設計図の情報をもとに、現場で施工可能な精度に引き上げた施工図作成
  • これにより、現場判断を最小化しミスを減らす

4. 事前段取りの極意②:現場での管理と精度の確保

実際の施工現場では、段取りの良し悪しが如実に結果に表れます。

墨出しとマーキング精度

  • 基準墨からのスリーブ・インサート位置の寸法管理を徹底
  • 作業前後でのダブルチェックをルーティン化

鉄筋との干渉回避

  • 配筋前の仮置きで干渉ポイントを早期に特定し、その場で調整
  • 設備業者とのリアルタイム連携が鍵

チェックリストと管理ソフト活用

  • 作業記録・写真・確認済み箇所をデジタルで一元管理
  • 施工管理アプリにより、検査・是正の見える化を実現

5. 躯体完了を効率化した現場事例

事例①:BIM連携による配管計画の最適化

某中層RCマンション工事では、BIMによる配管モデルの作成と現場タブレット運用により、打設前チェックを効率化。
→ スリーブ忘れゼロ、コア抜きゼロを実現

事例②:スリーブ設置専属チームを編成

設備業者主導のスリーブ設置チームを構築。配筋作業と並行で施工し、工区ごとの段取りを徹底
→ 躯体完了までの工程を従来比20%短縮

事例③:仮設屋根を活用した天候リスク対策

悪天候が続く中、仮設シート+簡易屋根を導入し、スリーブ設置を中断せず遂行。
→ 工程遅延リスクの低減に成功


6. まとめ:RCマンション躯体完了を効率化するためのチェックポイント

RCマンションの躯体完了を早めるには、見えない段取りの質がすべてです。

現場が重視すべき3つのポイント:

  1. 設計段階での情報整理と干渉チェック(BIM活用)
  2. 現場での寸法精度と鉄筋干渉の先読み
  3. 施工管理のデジタル化とチーム連携強化

打設後のリカバリーは非常に困難なRC構造だからこそ、先行段取りでどれだけの精度を担保できるかが、プロジェクト成功の決定要因となります。