現場検査で差がつくRCスラブ打設チェックリスト
目次
1. はじめに:RCスラブ打設における検査の重要性
RCスラブ(鉄筋コンクリート床版)は、建物の構造的な安定性と耐久性を担保するうえで極めて重要な構成要素です。とくに、打設工程における施工ミスや品質不良は、後々のクラック発生やたわみ、設備配管との干渉などにつながり、修復には多大な手間とコストを要します。
そのため、打設前・中・後の現場検査は欠かせず、「チェックリスト形式」で漏れなく確認することで、現場力の差が如実に表れます。本記事では、RCスラブの品質を確保するための検査ポイントを網羅的にまとめたチェックリストをご紹介します。
2. 打設前の確認項目チェックリスト
打設前は最も重要な「仕込み段階」。以下の項目をチェックすることで、トラブルの芽を摘むことができます。
- 型枠・支保工の精度確認
・水平・直角・高さの誤差チェック
・たわみ・隙間・がたつきの有無
・支保工の配置間隔と固定状況 - 配筋のピッチ・かぶり厚・定着長さの確認
・施工図との整合性チェック
・スペーサーブロックやサドル筋の配置状態確認 - スリーブ・電気配管・設備インサートの位置チェック
・墨出しとの一致
・貫通孔と主筋の干渉回避 - 打設計画書・施工図との整合性確認
・コンクリートの数量、打設ルート、ポンプ車配置
・工種間の調整完了(電気・設備との調整) - 作業員の配置・打設手順・緊急時対応の確認
・打設担当者・監督者の役割明確化
・バイブレーター・鏝仕上げ要員の人数確認
・雨天・暑熱・停電時などのバックアッププラン
3. 打設中のリアルタイムチェックポイント
現場の進行中こそ「見える化」と「記録化」が鍵になります。
- コンクリート温度・スランプの計測
・受け入れ時に記録
・JIS基準への適合性確認 - バイブレーター施工状況の監視
・過振動によるジャンカ、鉄筋ずれの防止
・打ち込み間隔と深さの適正化 - 打継ぎ部処理・コールドジョイントの防止
・打設時間の管理と手戻り防止
・打継部の表面処理の確認 - 打設スピードと打ち重ね時間の管理
・打設順序の統一
・打ち重ね許容時間(30分以内など)の徹底 - 現場写真・記録の取り方
・配筋・スリーブ・打設の工程別写真の撮影
・クラウド管理や日報とのリンクも有効
4. 打設後の検査と仕上がりチェック
打設が完了したからといって油断は禁物です。
- 表面仕上げの平滑度・水勾配の確認
・レーザーレベルや水糸で確認
・排水方向やスロープのチェックも必須 - クラックの有無と初期ひび割れ対策
・乾燥収縮や温度応力の観点から早期点検
・クラックスケールで測定・記録 - 養生状況(湿潤・保温・期間)の確認
・散水シート・養生マットの被覆状況
・夏季・冬季の温湿度対応措置 - 施工記録・写真・配筋検査との整合性のチェック
・打設数量・開始終了時間の記録確認
・写真帳や施工報告書への反映
5. よくあるミスとその防止策
以下のような“ヒューマンエラー”がトラブルの温床です。
- 打設順序・人員配置の見落とし → 事前ミーティングで全員に周知
- 配筋ずれ・型枠変形の未検出 → 打設前・中にダブルチェック体制
- 設備配管との干渉ミス → 施工図照合と立ち会い確認の徹底
- 検査漏れによるやり直し事例 → チェックリスト形式で記録を残すことで再発防止
6. チェックリストの活用で現場力を高めるコツ
- デジタルチェックリストの導入事例
・iPadやスマホで記録→クラウド共有
・リアルタイムで是正履歴を残せる - 若手教育・新人指導への活用法
・チェックリストをOJT教材に
・「なぜこれを確認するか」をセットで教える - ゼネコン本社や設計部との情報共有ツールとしての活用
・検査報告書の一元化
・品質監査にも応用可能 - 品質・工程・安全の三位一体管理に活かす
・同一ツールで全体統括→現場負荷の軽減
7. まとめ:検査を制す者がRCスラブを制す
RCスラブ打設におけるトラブルは、事前の「気付き」や「記録の有無」で結果が大きく変わります。属人化せず、チームで共有可能なチェックリスト運用が、現場力と品質の両立を可能にします。
日々の現場で「差がつく」一歩先の品質管理を目指すなら、今日からでもチェックリストを導入し、検査体制を進化させましょう。


