建築確認でつまずかないRC構造計算書のまとめ方
目次
1. はじめに:なぜRC構造計算書で建築確認がストップするのか
RC造建築物の建築確認において、構造計算書の不備や不整合は、審査の差し戻しや補正指示の主要因となっています。とくに最近では、審査機関が構造の妥当性や安全性を厳格に見る傾向が強まり、「確認済証がなかなか下りない」と悩む設計者も増加しています。
差し戻しの主な理由には以下のようなものがあります:
- 応力計算と断面検討の整合性が取れていない
- 添付図面とのリンクが曖昧
- 計算根拠が省略・不明確
- ソフト出力をそのまま提出し、審査者が読み解けない構成
こうした事態を防ぐには、「審査側の視点に立った構成」と「見やすさ・伝わりやすさ」が鍵となります。確認申請をスムーズに通すためにも、構造計算書の“まとめ方”が極めて重要です。
2. 確認申請に必要なRC構造計算書の全体構成
RC構造の確認申請に必要な構造計算書には、明確な構成と書式が求められます。以下が基本的な構成例です。
主な構成項目:
- 総括表(安全率・荷重条件・構造概要)
- 荷重計算(固定荷重・積載荷重・地震荷重など)
- 応力計算(ラーメン構造、壁式構造などによる部材応力)
- 断面検定(柱・梁・スラブ・基礎の断面検討)
- 変形検討(層間変形・たわみ等)
- 基礎計算・杭基礎計算(必要に応じて)
重要な添付資料:
- 構造図面(伏図、断面リスト、配筋図など)
- 構造計算概要書(まとめシート)
- 任意計算に関する技術的根拠資料
注意点として、各計算の結果と図面・仕様書との整合性を取ることが必須です。 また、ソフトウェア出力だけでは伝わらない意図や前提を補足資料で明示することも推奨されます。
3. 通りやすい構造計算書の書き方ポイント
建築確認をスムーズに通すためには、「伝わる構造計算書」の作成がカギです。
ポイント1:計算根拠は必ず明示
- 許容応力度、安全率、各種係数の出典や基準(例:建築基準法施行令、JASSなど)を記載する。
- 特に任意設計(中間層免震・制振等)の場合は、技術資料の添付も必要です。
ポイント2:配筋図や断面リストとのリンクを明示
- 柱・梁・スラブの位置や寸法と計算箇所がすぐに紐づくよう、ページ番号や断面記号を併記。
- フロア別や軸別に章立てを行うと読みやすくなります。
ポイント3:出力そのままではNG
- ソフトの標準出力は審査側にとっては不親切なことが多いため、目次・インデックスや解説の追加で「人に見せる設計資料」にすることが重要です。
4. ミスしやすいポイントと事前チェックリスト
構造計算書において見落とされがちなミスを回避するには、提出前のセルフチェックが欠かせません。
よくあるミスとチェック項目:
- 計算書内の数値と構造図で異なる記載はないか
- 地震荷重の設定が敷地条件に合っているか(地域係数、地盤種別など)
- 許容応力度の誤記や設定ミスがないか
- 梁断面検討でせん断・曲げ両方に対する安全率が記載されているか
- 基礎形式(独立基礎、べた基礎、杭基礎)の根拠が明示されているか
社内や第三者のクロスチェックを受けるのも有効です。
5. 建築主事・審査機関とのやりとりで気をつけること
審査機関とのやりとりでは、「技術的な意図」をいかに正確かつ簡潔に伝えられるかがポイントになります。
対応のコツ:
- 質問書が届いた際は、原則「文書」で回答する。口頭で済まさず、やり取りの記録を残しましょう。
- 特殊な設計意図や代替案を説明する場合、図解付きの説明資料を別添で出すと理解されやすくなります。
- トラブルを未然に防ぐには、**事前協議(審査機関とのヒアリング)**を有効活用するのも手です。
6. まとめ:確認済証をスムーズに得るために
RC構造計算書での確認申請をスムーズに進めるには、内容の正確性だけでなく「見せ方」「伝え方」も重視すべきポイントです。
- 見せ方を意識したレイアウトと図面連携
- 意匠・構造・設備の整合を設計段階で徹底
- 社内・外部によるレビューで精度向上
そして、若手設計者こそこうした「実務の勘どころ」を先輩や審査経験者から積極的に学び、単なる提出資料ではなく“相手が読める資料”を目指す姿勢が求められます。


