シャフト計画:設備スペース最適化
目次
1. はじめに:なぜ今「シャフト計画」が重要なのか
シャフトとは、建築物において給排水管や電線、ダクトなどの縦配管・配線を通すための設備スペースです。限られた床面積の中で、快適な居住性や使いやすさを確保するには、いかに効率よく設備スペースを配置できるかが設計の成否を左右します。
また、施工段階では、シャフトの不適切な配置が「干渉」や「納まり不良」といった施工トラブルを招きやすく、工程の遅延やコスト増加の要因になります。近年ではBIMの活用や省スペース設計が進む中で、シャフト計画の重要性が一層高まっています。
2. シャフトとは?基本概念と構成要素
シャフトには以下のような種類があります:
- PS(パイプスペース):主に給水・排水管を通すスペース
- DS(ダクトスペース):空調や換気ダクト用の縦スペース
- EPS(電気パイプスペース):電気や通信ケーブル用のシャフト
これらは法規制や保守性、施工性を考慮しながら設計されます。平面図では点や短冊状の記号で表され、断面図では縦貫するスペースとして明示されます。防火区画を貫通するため、耐火措置も求められます。
3. 設備シャフト配置の最適化とは何か?
設備シャフトを最適に配置するには、以下のポイントが重要です:
- 縦系統の集約:給排水や空調などの系統を上下階で揃えることで、配管長を短縮し省スペース化
- 階高とのバランス:シャフトの配置によっては梁下や天井裏の有効高さに影響する
- 更新性・保守性:長期にわたるメンテナンスや機器交換が容易に行える位置やサイズの確保
この最適化が建物全体の性能や運用コストにも直結します。
4. 設備干渉・納まりトラブルを防ぐ設計配慮
実務では、次のような干渉や納まり不良がよく見られます:
- 給排水管と梁との干渉
- シャフト位置と開口のズレによるスリーブ不適合
- 空調ダクトの通り道が確保されていない
これを防ぐには、建築・構造・設備の三者協調が不可欠です。設計段階でシャフト断面詳細図を作成し、各設備の配置を可視化することで、干渉を未然に防ぐことができます。
5. 実務で役立つシャフト計画のチェックリスト
設計段階で以下の項目を確認すると、トラブル防止につながります:
- シャフト内の有効寸法と必要配管スペースは確保されているか
- シャフトの上下階の位置関係が一致しているか
- スリーブ・プレカット図と連携した整合確認が行われているか
- メンテナンス用の点検口や開口が計画されているか
さらに、BIMや3Dモデルを活用することで、複雑な干渉リスクを視覚的に把握し、設計関係者間の共通認識を得やすくなります。
6. 事例紹介:シャフト計画の成功と失敗から学ぶ
成功事例:マンション設計でのシャフト統合
ある中高層マンションでは、PS・DSを集約した縦系統を一か所に集め、配管経路を短縮。これにより階高の節約と施工性の向上が実現しました。
失敗事例:病院での点検性の軽視
病院施設で、配線シャフトが医療機器更新時にアクセス困難な位置に配置されていたため、大規模な壁開口が必要となり、コストと時間が大幅に増加。
このように、メンテナンス性や将来の更新計画まで見据えた設計が重要です。
7. まとめ:シャフト計画は「全体最適」思考がカギ
シャフトは単なる縦配管スペースではなく、建築設計・設備設計・施工管理の交点にある「戦略的空間」です。
- 早期段階から設備設計者を交えた協働体制の構築
- BIMや断面詳細図による可視化と情報共有
- 保守性・施工性・コストのトータル最適化
これらを意識することで、シャフト計画は建物全体の質を引き上げる強力な設計手法となります。


