アンダースラブ防水のチェックポイント
目次
1. はじめに:アンダースラブ防水の重要性とは
地下構造物において、最下層のスラブ下(アンダースラブ)防水は、建物全体の防水性能を支える極めて重要な工程です。特に地下水位が高い地域や浸水リスクのある地盤では、アンダースラブ防水の成否が建物の耐久性・快適性に直結します。
湧水・雨水・地下水の侵入は、コンクリートの中性化や鉄筋の腐食、カビ・臭気の発生といった深刻な問題を引き起こし、修繕が困難になるケースも少なくありません。
そのため、初期段階での確実な施工と徹底した品質管理が求められます。
2. アンダースラブ防水の工法と材料
主な工法
アンダースラブ防水には、以下のような工法があります。
- シート防水工法:高分子系の防水シートを敷設。施工性が良く、物理的な止水層として有効。
- 塗膜防水工法:ウレタンやアスファルト系塗膜を下地に塗布。シームレスな仕上がりが可能。
- 複合防水工法:シートと塗膜の併用。高い止水性と耐久性を両立。
材料の選定ポイント
- 耐水性・水密性:長期にわたる水圧に耐える性能
- 耐久性・耐薬品性:地下環境に含まれる硫酸・塩分への抵抗性
- 施工性:気温や天候に左右されにくい工法選定
工法の使い分け
- 砂質土・地下水位の高い地盤 → シート系+バックアップ材
- 粘性土・高止水性能が必要な場合 → 複合防水工法
- 配筋密度が高く施工性が悪い部位 → 浸透型塗膜材や自己修復性材料
3. 施工時に押さえるべきチェックポイント
捨てコンクリート面の下地処理
- 清掃・レベル調整が不十分だと、シートや塗膜の密着性が低下し、剥離や空隙が発生します。
- コールドジョイント・ひび割れがある場合は事前に補修処理を行うことが必須です。
継ぎ目・端部・貫通部の処理
- シートの**重ね幅(通常は100mm以上)**とシーリング処理が重要。
- 設備配管などの貫通部は防水材との取合いを確実に処理する必要があります。
配筋やスラブ打設工程との整合性
- 防水材を破損・変形させないための工程調整が必要。
- スラブコンクリート打設時の歩行ルートや保護材の敷設も検討すべきポイントです。
4. 検査・試験の実施と記録管理
施工前の計画確認
- 施工図・要領書に基づく事前打合せとリスクチェックが鍵。
- 材料仕様・シート敷設方法・接合方法を現場と設計で共通認識化します。
現場検査と試験内容
- 水張試験(シート防水):施工後に一定期間水を張り、漏れがないか確認
- 目視検査・打音検査:浮きや剥離の兆候を早期発見
写真・記録管理
- チェックリストに沿った検査記録・写真整理は、トラブル時の説明責任にも重要です。
- 是正が発生した場合は、修正箇所の記録と再検査を徹底しましょう。
5. トラブル事例と対策ポイント
代表的な不具合例
- シートの剥がれ・膨れ → 下地処理不良、空気巻き込み
- 貫通部からの漏水 → 不適切な処理または未施工
- 施工後の破損 → 作業員の踏みつけや資材の落下など
是正方法と予防策
- 問題発生時は部分撤去+再防水施工が基本
- 施工後の立入制限や保護層の設置も有効な予防策です
チェックリスト活用
- 独自のチェックリストを作成し、現場の“見落とし”をなくす運用を推奨します。
6. まとめ:品質を守るための管理者の視点
アンダースラブ防水は、完成後には確認しにくく、補修も困難な「見えなくなる工事」の代表格です。だからこそ、設計者・施工者・検査者の三位一体での管理と記録が不可欠です。
管理者は以下を意識しましょう。
- 常に「設計図を信じすぎない目」を持つ
- 日々の現場観察と職人との情報共有
- そして「防水は最後まで気を抜くな」という意識
確実なアンダースラブ防水は、建物の寿命と信頼性を支える最前線です。


