建設実務通信

公共建築の設計・工事監理業務で新たな運用、設計事務所が参加しやすい環境整備へ

業界ニュース

国土交通省官庁営繕部は、第47回全国営繕主管課長会議の配布資料として、「建築設計・工事監理業務等の円滑な実施に向けた取組」を公表しています。官庁営繕部等が発注する建築設計・工事監理業務等では、近年、参加者の減少傾向がみられることから、令和8年から設計事務所がより参加しやすい環境を整えていく方針が示されています。

主な取組として、建築設計業務委託における余裕期間制度、業務委託におけるスライド制度、第三者監理方式の一部合理化が挙げられています。余裕期間制度では、受注者が全体履行期間内で業務の始期と終期を任意に設定できる「フレックス方式」を、官庁営繕事業の建築設計業務を対象に試行導入するとされています。

また、設計業務委託等技術者単価の上昇等を踏まえ、令和8年度以降に新規契約する建築関係建設コンサルタント業務から、スライド制度を試行導入することも示されています。これは、業務履行中の賃金水準等の変動を、受発注者協議のうえで業務委託料に反映する仕組みです。

さらに、建築工事監理業務の委託については、原則として設計業務の受注者とは異なる者と契約する考え方が示されてきましたが、工事監理業務委託の円滑な実施が困難になっている状況を踏まえ、当分の間、設計業務の受注者を工事監理業務の契約相手方として選定できる運用が示されています。ただし、工事監理業務の管理技術者は、設計業務の管理技術者と同一にできないとされ、第三者性の確保にも配慮されています。

関連して、「建築工事監理等業務委託の進め方」についても改定が予定されています。前回改定から約10年が経過し、その間に業務報酬基準、建築工事監理業務委託契約書、官庁施設の設計業務等積算基準・積算要領などが改定されたことを受け、令和9年6月中に改定版を国土交通省ホームページへ掲載する予定が示されています。

これらの動きは、公共建築の設計・工事監理業務を安定的に進めるため、発注方式や契約条件を実情に合わせて見直していく流れといえます。設計事務所や建設会社設計部にとっては、公共建築の設計業務に参加する際の工程計画、技術者配置、業務範囲、工事監理体制を見直すきっかけになります。

設計・工事監理業務で確認しておきたい体制と図面整理

公共建築の設計業務では、設計図書を作成するだけでなく、発注者との協議、関係法令の整理、各種基準への適合、概算・積算、工事監理への引き継ぎまで、業務全体を見通した進め方が重要になります。

余裕期間制度が活用される場合、設計事務所側では、業務の開始時期、技術者配置、外注・協力事務所との連携、図面作成工程をより柔軟に組み立てられる可能性があります。一方で、履行期間をどのように設定するかによって、基本設計、実施設計、積算、確認申請、各種協議の進め方も変わるため、初期段階での工程整理が欠かせません。

業務スライドについては、長期にわたる設計・工事監理業務で、技術者単価や物価の変動をどのように扱うかが重要になります。設計図書の作成範囲、成果物、作業工程、既履行・着手済・未着手の区分を分かりやすく整理しておくことは、契約管理や受発注者協議の前提にもなります。

また、設計業務の受注者が工事監理業務を担う可能性がある場合でも、設計意図伝達と工事監理の役割を明確に分けることが重要です。設計図書、質疑回答、変更履歴、確認申請図書、施工段階での検討事項を整理しておくことで、工事監理段階での判断や確認がしやすくなります。

実施設計サポートセンターの事業領域である建築図面作成支援、実施設計図面、各種詳細図、確認申請関連業務においても、こうした流れは重要です。図面作成を単独の作業として見るのではなく、発注者協議、確認申請、積算、施工、工事監理へつながる設計情報として整理することが、設計品質の向上と手戻り防止につながります。

今後、公共建築分野で柔軟な発注運用や業務報酬への対応が進むほど、設計事務所には、図面の品質だけでなく、業務体制、工程管理、成果物管理、設計意図の伝達まで含めた総合的な対応力が求められると考えられます。

出典元

国土交通省

参考リンク

国土交通省「第47回全国営繕主管課長会議 配布資料」
国土交通省「建築設計・工事監理業務等の円滑な実施に向けた取組」
国土交通省「建築工事監理等業務委託の進め方の改定について」
国土交通省「官庁施設の設計業務等積算基準」

※本記事は、公開情報をもとに業界動向を整理したものです。各資料・制度・サービス等の詳細については、必ず各発表元・関係機関の公式情報をご確認ください。

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