建設実務通信

建築士法改正、設計・工事監理の契約ルールを全規模へ拡大

業界ニュース

2026年7月31日、「建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)」が公布されました。今回の改正では、将来の建築士等の確保と、建築設計・工事監理における契約の適正化が大きな柱となっています。

設計実務に直接関係する重要な変更が、書面による契約締結義務の対象拡大です。

現行制度では、延べ面積300㎡を超える建築物の新築等について、建築士が行う設計・工事監理の委託契約を書面で締結することが義務付けられています。

今回の改正では、この面積要件がなくなり、建築士が行う設計または工事監理の委託を受けるすべての契約へ対象が拡大されます。小規模な住宅や店舗などを含め、建物の規模にかかわらず契約内容を明確にする方向へ制度が変わります。契約関係の改正部分は、公布の日から1年を超えない範囲内で政令により施行日が定められる予定です。

さらに、建築士事務所の開設者には見積書の作成・交付等について努力義務が設けられ、契約当事者についても、契約締結時に見積書の内容等を考慮するよう努めることとされました。設計業務の範囲と対価を契約前に整理することが、これまで以上に重要になります。

人材確保に関する制度も変更されます。

一級・二級・木造建築士試験については、一定の単位を取得し、最終学年で卒業見込みであることなどを条件として、卒業前の在学中から受験できる仕組みが導入されます。

また、建築系学科を卒業していない人が二級・木造建築士を目指す場合、現在は受験と免許取得までに実務経験7年が必要ですが、改正後は実務経験2年で受験でき、受験前を含む実務経験4年で免許取得が可能となる制度へ変更されます。建築設備士についても、受験時ではなく登録時までに必要な実務経験を積む制度へ見直されます。これら人材確保に関する改正は、公布の日から3年を超えない範囲内で政令により施行日が定められます。

図面作成業務でも「どこまでが設計業務か」の整理がより重要に

今回の改正は、建築設計事務所だけでなく、建設会社設計部、ハウスメーカー、不動産開発会社、設計協力会社など、複数の事業者が連携して実施設計を進める体制にも関係する動きです。

実施設計では、意匠図、平面詳細図、展開図、建具表、各種詳細図、確認申請図書など、多数の図面を複数の担当者や外部協力先で分担するケースがあります。

その際には、単に「図面を作成する」という業務名だけではなく、誰が設計判断を行うのか、誰が作図するのか、検図・承認を誰が担当するのか、確認申請への対応範囲はどこまでか、といった役割を明確にしておくことが重要です。

特に設計業務の一部を外部へ委託する場合は、業務範囲、成果物、修正回数、納期、検図体制、責任範囲などを事前に整理することで、設計変更や追加作業が発生した際の認識違いを抑えやすくなります。

今回の法改正によって、建築士が行う設計・工事監理について契約書面化の対象が全規模へ広がることから、設計業務そのものだけでなく、その周辺で行われる図面作成支援や設計補助業務についても、業務内容と責任分担を明確にする契約・発注管理の重要性がさらに高まると考えられます。

設計図書を複数の担当者や外部パートナーで作成する企業では、法改正の施行を待つのではなく、現在使用している業務委託契約書、見積書、発注書、業務範囲表などが実際の設計・作図体制と一致しているかを確認しておくことが、今後の実務体制を整える一つの材料になります。

出典元

国土交通省
衆議院

参考リンク

国土交通省「建築士法の一部を改正する法律(令和8年法律第74号)について」
国土交通省「建築士法の一部を改正する法律」の概要
衆議院「第221回国会 建築士法の一部を改正する法律案」

※本記事は、公開情報をもとに業界動向を整理したものです。各資料・制度・サービス等の詳細については、必ず各発表元・関係機関の公式情報をご確認ください。

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