国交省、中大規模木造の「先導枠」に2件採択―9階建て事務所・12階建てホテルで混構造や耐火設計を高度化

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国土交通省は2026年8月7日、令和8年度「優良木造建築物等整備推進事業」の先導枠について、2件の採択プロジェクトを公表しました。先導枠は、木造化に関する先導的な設計・施工技術を導入するプロジェクトを支援する制度です。今回の募集では2件の提案があり、いずれも採択されました。
採択されたのは、宮城県仙台市の「鹿島東北支店ビル新築工事」と、東京都中央区の「(仮称)木挽ビルホテル計画」です。前者は地上9階・地下1階、延べ面積8,889.26㎡の事務所、後者は地上12階・地下1階、延べ面積9,742.82㎡のホテル・飲食店・自動車車庫で、いずれも鉄骨造等と木造を組み合わせた混構造が採用されています。
鹿島東北支店ビルでは、建物外側のコア部分をS造、内側の事務室エリアを木造とする平面混構造を採用します。木造部分が主に長期荷重を負担し、S造部分が地震力を負担する構成に加え、木造部分には制震システムを設けて地震時の揺れを低減します。防耐火についても、耐火性能検証法や避難安全検証法を活用した設計が評価されています。
一方、木挽ビルホテル計画では、S造・RC造・木造の混構造とし、CLT耐震壁や木造フレーム、木製ブレースなどを採用します。耐火性能を持つ柱・梁や、CLT耐震壁と遮音間仕切りを一体化する設計など、構造・防耐火・遮音を横断した技術が盛り込まれています。
中大規模木造では「取り合い」を描き切る実施設計が重要に
今回の2件から見えてくるのは、中大規模建築物の木造化では、単純に鉄骨やRCを木材へ置き換えるのではなく、異なる構造・材料を組み合わせた設計が重要になっていることです。
実施設計では、木造部と鉄骨造部の接続、耐火被覆、CLT耐震壁と鉄骨梁・床スラブとの取り合い、外部に使用する木材の防水・防腐、仕上げ材の交換方法など、基本設計だけでは表現しきれない部分を詳細図として具体化する必要があります。
実際に今回採択された計画では、木造と鉄骨造の接続部における耐火被覆、CLT耐震壁と鉄骨大梁の取り合い、交換可能な外装木材の納まりなど、ディテールそのものが建築性能を成立させる重要な要素となっています。
こうした建物では、平面詳細図、矩計図、部分詳細図、構造図、建具・仕上げ関連図などを個別に作成するだけではなく、意匠・構造・設備の情報を横断して整合させる作業が重要になります。
特に耐火性能や構造性能に関係する納まりは、設計変更によって周辺図面にも影響が及ぶため、実施設計図面を作成する担当者間で変更情報を共有し、関連する詳細図を同時に更新できる体制が必要です。
木造化の進展で図面作成支援にも専門性が求められる
優良木造建築物等整備推進事業では、先導枠について「防火・構造等に関して先導性を有すること」などが要件となっています。また、普及枠の要件として一定規模以上、ZEH・ZEB水準への適合、2,000㎡以上の大規模建築物の新築ではLCCO2評価の実施などが示されており、先導枠もこれら普及枠の補助要件を満たすことが求められます。
そのため中大規模木造の実施設計では、意匠図だけでなく、構造、防耐火、省エネルギー、維持管理など複数の設計条件を図面へ正確に反映する必要があります。
建築図面作成支援を外部へ委託する場合も、単純なCAD作図として切り分けるのではなく、どの部分が構造性能や耐火性能に関係する納まりなのかを共有し、設計者による判断・検図と作図業務を適切に連携させることが重要です。
確認申請関連業務についても、混構造や高度な防耐火設計を採用する建築物では、設計図書間の整合性が審査対応の基礎となります。設計初期から実施設計、確認申請、施工図へ情報をつなげていく図面管理の重要性は、今後さらに高まると考えられます。
国土交通省は今回の先導枠について、調査設計費では木造化に関する費用の2分の1以内、建設工事費では木造化による掛増し費用の2分の1以内、または建設工事費の10%以内とし、補助上限額を3億円としています。2回目以降の募集については検討中としています。
出典元
国土交通省
参考リンク
国土交通省「令和8年度 優良木造建築物等整備推進事業 採択プロジェクトの決定」
国土交通省「先導枠採択プロジェクト講評・事業概要」
※本記事は、公開情報をもとに業界動向を整理したものです。各資料・制度・サービス等の詳細については、必ず各発表元・関係機関の公式情報をご確認ください。