建築基準法施行令を11月1日改正―採光・防火規制など4項目を合理化、確認申請図面への影響を整理

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国土交通省は2026年9月11日、「建築基準法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定しました。建築物の安全性を確保しながら、住宅の円滑な供給や新たな設備の導入を進めるため、型式適合認定、採光、防火・避難、用途地域における危険物の総量規制の4項目を見直します。公布は9月16日、施行は11月1日の予定です。
今回の改正では、建築資材の調達環境の変化や技術的知見の蓄積を踏まえ、従来の規制を一律に適用するのではなく、安全性に支障がない範囲で対象を合理化する考え方が採られています。設計実務では、確認申請時の法規チェックや図面・仕様の整理方法に関係する改正として確認しておく必要があります。
型式適合認定に「構造耐力だけ」の新たな類型
一つ目の改正は、型式適合認定制度の拡充です。
現在の型式適合認定では、建築物全体、建築設備を除いた建築物全体、建築設備といった類型があります。今回の改正では、新たに「建築物の構造耐力に係る規定の適合」に関する類型が追加されます。
背景には、認定された仕様で使用する予定だった建築資材が、供給事情などによって調達できなくなった場合の対応があります。
新しい類型を利用することで、構造耐力に関する部分について型式適合認定による審査省略を受けながら、調達できなくなった材料などについては個別に確認審査を受けるといった柔軟な対応が可能になります。
住宅メーカーなどで標準化された設計を大量に扱う場合には、材料変更が生じた際に建物全体を一から確認するのではなく、変更部分を切り分けて扱いやすくなることが期待されます。
材料変更時は「どの図面へ影響するか」の整理が重要
制度が合理化されても、設計図面側の変更管理が不要になるわけではありません。
例えば構造部材の材料や仕様を変更した場合、構造図だけでなく、意匠図の壁厚、柱・梁形状、開口位置、天井高さ、設備ルートなどに影響することがあります。
実施設計では、変更となった仕様を確認したうえで、
構造伏図
軸組図
平面図
断面図
矩計図
平面詳細図
設備図
など、関連する図面を横断して確認する必要があります。
特に、確認申請図と実施設計図を並行して作成している案件では、申請図だけが最新仕様になり、施工用の詳細図に旧仕様が残ることがないよう注意が必要です。
型式適合認定による審査の合理化と、設計図面の変更管理は別の問題として整理しておくことが重要です。
児童福祉施設等の採光規制を一部合理化
二つ目は、児童福祉施設等における採光規制の見直しです。
現行制度では、児童福祉施設等の一定の居室が採光規制の対象となっています。今回の改正では、このうち「利用者の滞在時間が短いことその他の理由により衛生上支障がないものとして国土交通大臣が定めるもの」を対象から除外できる仕組みに変更されます。
ただし、具体的にどの居室が対象外になるのかについては、別途国土交通大臣告示で定める予定です。
そのため、11月1日の施行後に児童福祉施設などを設計する場合でも、「用途名称だけを見て採光規制がなくなった」と判断することはできません。
確認申請図面を作成する際には、室用途、利用方法、滞在時間などを整理したうえで、最新の告示内容と照合する必要があります。
採光計算図は告示内容を確認してから作成範囲を決める
採光規制は、実施設計や確認申請業務にも直接関係します。
採光規制の対象となる居室では、平面図上の窓寸法だけでなく、隣地境界線や道路との距離、開口部中心までの高さなどを用いて有効採光面積を確認する必要があります。
今回の合理化によって一部の室が対象外となれば、採光計算や申請図書の作成負担が軽減される可能性があります。
一方で、対象となる室と対象外となる室が同じ施設内に混在する可能性もあります。
そのため、平面図の室名、建具表の開口寸法、採光計算表、配置図・断面図に記載する寸法などについて、どの居室の計算根拠なのかを明確にしておくことが重要です。
防火・避難規制も「一定条件を満たす建築物」を対象外へ
三つ目は、防火・避難関係規定の合理化です。
今回の改正では、建築基準法施行令第109条の2の2や第112条の一部規定について、建築物の構造、用途、周囲の状況を考慮し、防火上または避難上・防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める建築物を対象から除外できるようにします。
対象には、層間変形角や防火区画、竪穴区画など実施設計との関係が深い規定が含まれています。
ただし、ここでも具体的な対象建築物や条件は別途告示で定められます。
設計段階では、政令だけを見て防火区画が不要になったと判断するのではなく、建物用途、構造、規模、周囲の状況などを確認し、告示による適用条件まで確認する必要があります。
防火区画の変更は平面図だけでは完結しない
防火規制が合理化された場合、実施設計図面への影響範囲は比較的大きくなる可能性があります。
防火区画を変更すると、
防火区画図
平面図
建具表
防火設備の仕様
壁詳細図
天井伏図
設備貫通部
ダクト・配管計画
などに影響します。
特に防火戸や防火シャッターの位置を変更した場合には、建具表や電気設備との連動条件まで確認する必要があります。
また、区画壁を変更すれば、天井内のダクトや配管が区画を貫通する位置も変わる可能性があります。
規制が合理化されるほど図面が単純になるとは限りません。適用条件を確認し、その条件が実施設計図面のどこに反映されているのかを整理することが重要です。
水素など新たな設備導入にも関係する危険物規制の合理化
四つ目は、用途地域における危険物の総量規制です。
今回の改正では、圧縮ガスまたは可燃性ガスを燃料として使用する設備などについて、安全上・防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する設備で貯蔵・処理されるガスを、建築基準法の用途規制における危険物から除外できるようにします。
これにより、一定の安全基準を満たす新しいエネルギー設備などを建築物へ導入する際、用途地域による危険物総量規制との関係を整理しやすくなる可能性があります。
ただし、対象となる設備や安全基準は別途告示で示されるため、設備計画を進める際には最新情報の確認が必要です。
実施設計では、設備機器だけでなく、機器配置、燃料設備、換気、離隔、設備基礎、防火区画、搬入・保守経路など、建築側との取り合いも確認する必要があります。
11月1日の施行前に「告示」を含めた最終確認を
今回の政令改正は2026年9月16日に公布され、11月1日に施行される予定です。
実務上、特に注意したいのは、4項目のうち複数について「国土交通大臣が定める基準」が別途告示で規定される点です。
そのため、政令の概要だけをもとに確認申請図面や実施設計図面の作成方法を変更するのではなく、告示の内容や施行時期、申請案件への適用関係を確認してから対応する必要があります。
法改正時には、設計条件の変更が一つの図面だけに影響するとは限りません。
法規チェック表、確認申請図面、実施設計図面、各種詳細図、建具表、仕様書など、関連する資料をまとめて見直し、変更された法規条件がどこへ反映されているのかを管理することが重要です。
今回の改正は規制の合理化を目的としていますが、設計実務では「規制が緩和された」という理解だけでなく、「どの建築物・居室・設備が、どの条件を満たした場合に対象となるのか」を正確に確認することが、確認申請や実施設計の手戻りを防ぐポイントになります。
出典元
国土交通省
e-Gov
参考リンク
国土交通省「『建築基準法施行令の一部を改正する政令』を閣議決定」
国土交通省「建築基準法施行令の一部を改正する政令案 新旧対照条文」
e-Gov「建築基準法施行令の一部を改正する政令案に関する意見募集」
※本記事は、公開情報をもとに業界動向を整理したものです。各資料・制度・サービス等の詳細については、必ず各発表元・関係機関の公式情報をご確認ください。