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国交省、「2050先導型住宅推進事業」第2回募集を開始―災害後も住み続けられる住宅を実施設計でどう具体化するか

業界ニュース

国土交通省は2026年9月18日、「2050先導型住宅推進事業」の令和8年度第2回提案募集を開始しました。地震、台風、豪雨、火災などの自然災害が発生した場合でも、住宅での「居住継続」「生活継続」を可能にする先導的な取組を支援するモデル事業です。応募期間は10月19日18時までとされています。

提案では、想定する災害リスクを明確にしたうえで、そのリスクの発生防止・低減、発災後の生活継続、復旧までをどのように実現するのかを具体的に示すことが求められます。また、平常時、発災時、発災直後、発災後の回復期という時間軸のどこに対応する措置なのかを整理し、効果を検証する方法まで提案する必要があります。モデル住宅の計画戸数は10戸以上50戸以下です。

「耐震」だけではない住宅レジリエンス

住宅の災害対策というと、まず耐震性能が注目されます。しかし今回の事業では、建物が倒壊しないことだけでなく、災害発生後も住民がその住宅を生活拠点として使い続けられるかという視点が重視されています。

国土交通省の事業概要では、平常時の安全性・居住性と災害への備えを両立する「フェーズフリー」、発災時の被害最小化、発災直後の最低限の生活継続、さらに平常状態への迅速な復旧までを一連の流れとして整理しています。

例えば、発災直後については、電気や水道などのインフラが復旧するまでの3日間から1週間程度を想定しています。住宅設計でも、構造性能だけでなく、電源、水、設備、室内環境、復旧のしやすさなどを総合的に考える必要があります。

災害リスクを基本設計の段階から設定する

今回の制度で実施設計にも関係する重要な考え方が、「どの災害を想定しているのか」を先に明確にすることです。

地震を想定する住宅と、水害を想定する住宅では、必要となる設計条件が異なります。

地震であれば、構造体の耐震性に加え、設備機器の転倒防止、配管や配線の損傷対策、家具や設備の固定などが課題になります。

浸水を想定する場合には、設備機器や分電盤の設置高さ、床レベル、外部からの浸水経路、給排水設備などについて検討する必要があります。

台風や暴風への対策であれば、屋根、外装材、開口部、設備機器などの設計条件が重要になります。

つまり「防災性能の高い住宅」という抽象的な目標ではなく、想定するリスクを具体化し、それを平面図・立面図・断面図・各種詳細図へ落とし込むことが必要になります。

蓄電設備を置くだけでは実施設計は完了しない

事業概要では、レジリエンスに関係する設備として蓄電池、V2H、燃料電池などについても条件が示されています。また、既存の一般的な設備や対策を単純に追加するだけではなく、先導的な付加価値を持つ提案が求められています。

設計実務では、こうした設備を仕様書へ記載するだけでは十分ではありません。

蓄電池を設置する場合でも、設置スペース、搬入経路、点検スペース、電気配線、周囲との離隔、雨水への対策などを検討する必要があります。V2Hを利用する場合には、駐車位置と機器位置、配線ルート、外構計画との整合も必要になります。

燃料電池などについても、設備基礎、給排水、配管、メンテナンス空間など、建築側と設備側の調整が必要です。

こうした内容は設備図だけで完結せず、配置図、平面図、立面図、外構図、各種詳細図にも関係します。

断熱性能も「災害時の生活継続」という視点へ

事業概要では、モデル住宅の性能要件として、耐震性や劣化対策に加え、断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6以上などの基準も示されています。

断熱性能は通常、省エネルギーや快適性という視点で考えられますが、災害時には別の意味も持ちます。

停電によって冷暖房設備が使用できなくなった場合でも、外気温の影響を受けにくい住宅であれば、一定時間、室内環境を維持しやすくなります。

そのため、断熱材の種類・厚さ、開口部性能、日射対策などは、省エネ計算だけではなく災害時の居住継続にも関係する設計条件になります。

実施設計では、矩計図、平面詳細図、建具表、断熱範囲などと省エネ計算条件を一致させることが重要です。

「平常時→発災時→復旧」を図面でつなぐ

今回の事業で特徴的なのは、災害対策を一つの設備や部材として評価するだけでなく、時間軸で考える点です。

例えば平常時には通常の住宅として使いやすく、災害が発生した際には被害を抑え、その直後には最低限の生活を維持し、その後できるだけ早く通常生活へ戻れることが求められます。

この考え方を設計図面へ反映する場合、設備を「設置するかどうか」だけではなく、災害時にどのように使用するのかまで確認する必要があります。

非常時に使用する設備があっても、地震で機器や配管が損傷すれば利用できません。復旧時に交換が必要な機器が、容易に点検・搬出できない位置に配置されていれば、復旧に時間がかかります。

そのため、設備機器の固定方法、配管・配線経路、点検口、搬入経路、メンテナンススペースなどを詳細図まで確認することが重要になります。

一戸単位だけでなく「複数住戸で使う設備」も対象

今回の提案では、一戸ごとに設備を設ける方式だけでなく、複数住戸で設備などを共同利用する方式も想定されています。国土交通省の資料では、複数の戸建住宅やマンションで共同利用する設備を設けるケースも示されています。

共同住宅や住宅団地では、この考え方が設計に大きく影響します。

共用の非常用電源や設備を設ける場合には、住戸内の図面だけでなく、

共用部
設備室
電気幹線
屋外設備
避難動線
外構

などを一体的に計画する必要があります。

また、災害時に誰がどの設備を利用するのかという運用方法も、配置計画に関係します。

建築・設備・外構を別々に設計するのではなく、非常時の使われ方を共有したうえで図面を作成することが重要です。

新築だけでなく既存住宅の改修も対象

「2050先導型住宅推進事業」は、新築住宅だけでなく既存住宅の改修も対象としています。注文住宅、建売住宅、分譲マンション、賃貸住宅が対象として示されています。

既存住宅へレジリエンス設備を追加する場合には、新築以上に既存条件の確認が重要です。

蓄電設備や新しい配管・配線を追加しようとしても、設置スペースや既存設備との干渉によって計画どおり納まらないケースがあります。

既存図面が残っていても、実際の建物と一致しているとは限りません。

そのため、改修設計では現況調査を行い、必要に応じて既存図のトレースや現況図の整備を行ったうえで、設備追加や改修範囲を検討することが重要です。

効果検証まで考えた設計が求められる

今回の事業では、レジリエンス措置を導入するだけでなく、その効果をどのように検証するかまで提案する必要があります。

国土交通省の資料では、災害発生時に効果を検証できる方法だけでなく、実際に災害が発生しなくても、居住者へのインタビューやアンケートなどによって検証できる方法を提示することが求められています。

今後、住宅性能を評価する際には、「設計時に性能を確認して終わり」ではなく、完成後に実際の効果を確認する考え方が広がる可能性があります。

計測機器やモニタリング設備を使用する場合には、それらをどこへ設置し、どのように電源・通信を確保し、どのように交換・点検するのかも設計条件になります。

防災設備を追加するのではなく、住宅全体をレジリエンス設計へ

今回の第2回募集では、単純に蓄電池や高性能設備を導入するだけではなく、2050年を見据えた先導性、実現可能性、他の住宅への普及可能性、効果検証などが評価されます。

住宅のレジリエンス設計は、「防災設備を付ける」という考え方だけでは成立しません。

構造、外皮、設備、外構、平面計画、維持管理、災害後の復旧までを一体として考え、それぞれの設計条件を実施設計図面へ正確に反映する必要があります。

今後、災害時にも住み続けられる住宅が求められるほど、実施設計では平面図や立面図だけでなく、矩計図、設備図、外構図、各種詳細図まで含めて、「平常時から復旧まで建物がどう機能するのか」を確認する設計が重要になっていきそうです。

出典元

国土交通省
2050先導型住宅推進事業 評価・交付事務局

参考リンク

国土交通省「2050先導型住宅推進事業」の提案募集(第2回)を開始
2050先導型住宅推進事業 公式サイト
国土交通省「2050先導型住宅推進事業」の概要

※本記事は、公開情報をもとに業界動向を整理したものです。各資料・制度・サービス等の詳細については、必ず各発表元・関係機関の公式情報をご確認ください。

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