建設実務通信

建築工事費調査が公表、設計初期から概算・仕様・図面精度の整理が重要に

業界ニュース

国土交通省は2026年9月30日、令和7年分の「建築工事費調査」の調査結果を公表しました。建築工事費調査は、基幹統計である建築着工統計調査を構成する標本調査であり、全国の着工建築物について、完成時の工事床面積や工事実施額などを把握するために実施されています。

今回の調査では、令和7年に完成・中止した建築物の実施状況が推計されています。調査対象となった令和7年に完成予定の建築物9,033棟のうち、6,921棟分の回答があり、完成建築物の工事実施床面積と工事実施額が木造・非木造に分けて公表されました。

公表内容によると、令和7年に完成した建築物の工事実施床面積は、木造で4,115万9,751㎡、非木造で5,456万3,141㎡と推計されています。また、工事実施額は、木造で10兆6,511億円、非木造で18兆7,331億円とされています。

建築工事費の動向は、設計事務所や建設会社設計部にとって、単なる統計情報ではありません。基本計画や基本設計の段階で提示する概算工事費、仕様選定、構造形式、設備計画、外装材や内装材のグレード設定など、設計判断に直接関わる重要な情報です。

近年は、資材価格、人件費、施工体制、設備機器の納期など、工事費に影響する要素が多様化しています。そのため、設計段階では「あとで金額を調整する」のではなく、初期段階からコストの前提条件を整理し、図面・仕様書・概算見積の整合を確認しながら進めることが重要になります。

概算工事費と設計図書の整合で確認しておきたい実務ポイント

建築工事費の上昇や変動が大きい局面では、設計初期の概算精度が重要になります。計画段階で延床面積、構造種別、階数、用途、外装仕様、設備仕様、駐車場や外構の範囲などが曖昧なままだと、後工程で予算超過が発生しやすくなります。

基本設計では、平面計画や外観デザインだけでなく、構造形式、設備方式、仕上げグレード、開口部仕様、共用部の範囲、外構計画などを、概算工事費と照らし合わせながら整理する必要があります。設計内容とコストの前提がずれていると、実施設計や見積段階で大きな仕様変更が必要になる可能性があります。

実施設計に進む段階では、平面図、立面図、断面図、矩計図、仕上表、建具表、構造図、設備図、外構図、各種詳細図の整合が欠かせません。たとえば、外壁仕様、サッシ仕様、天井高さ、設備スペース、配管ルート、機械室、PS・EPS、屋上設備、外構範囲などは、工事費に大きく影響します。図面間で情報が食い違うと、見積条件が不明確になり、施工者ごとの見積比較も難しくなります。

また、概算見積や実施設計見積を行う際には、図面に表れている工事範囲と、仕様書・数量表・見積条件の範囲を合わせることが重要です。建築本体、設備、外構、解体、仮設、地盤改良、申請関連、別途工事などの区分を明確にしないと、発注者との認識に差が生じやすくなります。

実施設計サポートセンターの事業領域である建築図面作成支援、実施設計図面、各種詳細図、確認申請関連業務においても、工事費を意識した図面整理は重要なテーマです。図面を作成する際には、単に形状を描くだけでなく、見積や施工に必要な情報が過不足なく整理されているか、仕様と図面が矛盾していないかを確認する視点が求められます。

今後も建築工事費の動向は、設計実務に大きな影響を与えると考えられます。設計事務所や建設会社設計部では、統計情報を市場動向の確認にとどめず、自社の概算手法、仕様決定プロセス、図面チェック体制、外注先との情報共有を見直す材料として活用することが大切です。

出典元

国土交通省
政府統計の総合窓口 e-Stat

参考リンク

国土交通省「建築工事費調査(令和7年分)の調査結果について」 国土交通省
政府統計の総合窓口 e-Stat「建築工事費調査」 e-Stat
国土交通省「建築動態統計調査」 国土交通省
国土交通省「統計情報」 国土交通省

※本記事は、公開情報をもとに業界動向を整理したものです。各資料・制度・サービス等の詳細については、必ず各発表元・関係機関の公式情報をご確認ください。

お気軽にお問合せください

まずは相談する