コンクリートのクリープと収縮を押さえる
目次
. はじめに:コンクリートにおける変形のリスクとは
コンクリートは高い圧縮強度を持つ一方で、長期的な変形(クリープ)や体積変化(収縮)を引き起こす材料です。これらの変形が構造性能や美観、耐久性に与える影響は軽視できません。特に高層建築や長スパン構造物では、クリープや収縮によるたわみやひび割れが深刻な問題につながるため、設計・施工段階での適切な対策が重要です。
2. コンクリートのクリープとは何か
クリープの定義と発生メカニズム
クリープとは、一定の荷重を長時間かけたときに、時間の経過とともにコンクリートがじわじわと変形する現象を指します。これはセメントペースト中の水分移動やマイクロ構造の再編成によって生じるものです。
荷重・温度・湿度との関係
クリープは、荷重がかかる期間が長く、温度が高く、湿度が低い環境ほど顕著に進行します。
発生しやすい部位と時期
梁・スラブ・柱など、恒常的に荷重を受ける部位に発生しやすく、特に初期乾燥期から数年の間に大きく進行します。
3. 収縮の種類と特徴
乾燥収縮・自己収縮・温度収縮の違い
- 乾燥収縮:コンクリート内部の水分が蒸発することによる体積減少
- 自己収縮:水和反応で内部水が消費されることによる体積変化(特に高強度コンクリートで顕著)
- 温度収縮:硬化後の冷却による収縮
各収縮が及ぼす構造的・仕上げ的影響
収縮による寸法変化は、ひび割れ・剥離・反り・歪みの原因となり、構造的・美観的な問題を引き起こします。
ひび割れリスクとクラック抑制の観点
収縮ひび割れは鉄筋腐食の起点ともなるため、早期段階からの抑制策が必要です。
4. クリープ・収縮を抑制する材料選定
水セメント比の適正化
水セメント比が高すぎると、毛細管空隙が多くなり収縮やクリープが増加します。低めの比率での緻密な設計が重要です。
混和材(フライアッシュ・スラグ等)の活用
これらの混和材は水和反応の進行を制御し、長期的なクリープ・収縮の抑制に寄与します。
収縮低減剤の効果と使用条件
収縮低減剤を用いることで、初期の乾燥収縮を緩和できますが、効果は製品や配合条件に依存するため、適切な選定が必要です。
5. 設計段階での対策方法
クリープ・収縮を見越した構造設計の工夫
支持スパンの短縮や、剛性の高い構造系の採用など、変形を前提にした設計が重要です。
スリット・目地・誘発目地の設置計画
収縮による不規則なクラックを防ぐため、意図的に収縮を逃すスリットや目地の配置が有効です。
鉄筋量・配筋方法による拘束対策
適切な鉄筋比と配筋パターンは、収縮による引張応力を分散し、ひび割れの発生を抑えます。
6. 施工段階での抑制対策
適切な養生方法と期間の管理
湿潤養生やシート養生などにより、急激な乾燥を防ぐことが収縮対策に効果的です。
打設計画と温度管理の工夫
大型構造物では打設時の温度上昇に注意が必要であり、急激な温度低下による温度収縮を防ぐ対策が求められます。
打継ぎ位置・目地位置の最適化
収縮をコントロールしやすい位置に打継ぎや目地を配置することで、クラックの発生を最小限に抑えることが可能です。
7. 実際の対策事例とその効果
クリープ抑制に成功した高層RC構造例
高層RC造ビルで、早期プレストレス導入と高弾性モルタルの併用により、たわみの進行を30%以上抑制した事例があります。
収縮クラックを防止した土間コンクリート例
大面積の土間コンクリートにおいて、誘発目地と繰返し散水養生を徹底したことで、ひび割れゼロを実現した事例も存在します。
現場での工夫と現実的な対応策の紹介
施工時の温度記録と収縮率測定を組み合わせ、適時な養生切替や追加補修を行ったことで、全体の品質が大きく向上した現場も報告されています。
8. おわりに:品質確保と長寿命化の視点から
コンクリートのクリープと収縮は、適切な理解と対策によって抑えることが可能です。構造性能や仕上げの品質を確保し、建物の長寿命化を図るためにも、材料・設計・施工の各段階で総合的な対策が求められます。最新の規準(JASS5やJCIガイドライン)や研究動向にも注目し、常にアップデートされた知識を現場に活かすことが重要です。


