ワッフルスラブでつくる長スパン床
目次
1. はじめに:なぜ今「ワッフルスラブ」に注目が集まっているのか
建築の自由度と快適性が求められる現代において、柱の少ない大空間を可能にする「長スパン床構造」が注目されています。中でもワッフルスラブは、構造性能と意匠性を兼ね備えた工法として、再評価が進んでいます。
軽量化・高強度化を図りながら、天井仕上げを兼ねる視覚的インパクトも持ち合わせるワッフルスラブは、商業施設や教育施設、駐車場といった広い空間が必要な建物において特に有効です。近年はBIMやプレキャスト工法との連携によって、設計・施工の両面で導入が加速しています。
2. ワッフルスラブとは?定義と基本構成
ワッフルスラブとは、格子状にリブ(梁状の突起)を配置した床スラブ構造で、底面がワッフル(格子模様)状になることからこの名がついています。コンクリートスラブの自重を減らしつつ、構造的な剛性と耐荷重性を高めることが可能です。
▷ 一般的なスラブとの違い
- 一般的なRCスラブ:全面を一様にコンクリートで打設
- ワッフルスラブ:凹凸状の型枠を使用し、軽量化されたスラブ構造
▷ 型枠と材料
- プラスチック製またはFRP製の再利用可能な型枠が主流
- 通常の現場打ちだけでなく、プレキャスト化も可能
3. ワッフルスラブの構造的メリット
ワッフルスラブは長スパンを必要とする建築構造において、以下のような強みを発揮します。
▷ 長スパン対応とスラブ厚の最適化
スラブの下部に格子状のリブを形成することで、一般的なスラブよりも少ないスラブ厚で高い剛性を実現できます。
▷ 剛性向上とたわみ抑制
スパン中央部のたわみ量が減少し、床振動の抑制や仕上げ材への影響も軽減されます。
▷ 設計自由度の向上
大スパンでも柱間隔を広く取れるため、開放的な空間設計が可能です。構造的な一貫性も保ちやすく、建築・構造・設備の調整も容易です。
4. 設計上の留意点と計算のポイント
ワッフルスラブは独特な構造形式であるため、適切な設計と構造計算が求められます。
▷ リブ寸法・間隔の設計指針
- リブ幅:約100〜200mm
- リブピッチ:約600〜1000mm
- リブ高:200〜400mm程度が一般的
▷ 荷重条件とスラブ厚の設定
長スパン・重荷重に応じて、スラブ厚やリブの高さを適切に設計する必要があります。部材厚を均一にするよりも、荷重分布を踏まえた最適化が重要です。
▷ 遮音・貫通処理への配慮
ワッフルスラブは貫通しにくいため、設備貫通スリーブの位置は事前に十分検討を。遮音性能にも工夫が求められる場面があります。
5. 施工上の工夫と型枠管理
現場施工では、型枠の精度管理と脱型タイミングが品質を左右します。
▷ 型枠の組立・脱型
- 型枠は繰り返し使用が可能な再利用型を採用
- 養生期間や脱型強度の確認が必要
- 天井仕上げを省略する場合は表面の美観も重要視
▷ 施工精度と品質管理
- ワッフル型枠のレベル調整と固定を正確に
- 鉄筋との干渉を避ける設計調整
- 脱型後の仕上がりを見越した施工管理
▷ 施工事例の工夫
- 設備スリーブとの取り合いを事前にBIMで検討
- 中間支保工の配置でたわみとクラックを抑制
- 打設時のコンクリート流動性に配慮した混練設計
6. ワッフルスラブを活かす活用事例
実際のプロジェクトでの導入事例は、設計上の選択肢拡大に寄与しています。
▷ 長スパンを活かす施設
- 体育館、大学講義室、ショッピングモール、物流倉庫など
- 柱を減らして機能性と美観を両立
▷ 天井意匠としての利用
- ワッフル模様をそのまま意匠として見せる仕上げも可能
- LED照明やダクトとの融合でデザイン性を演出
▷ プレキャスト導入による省力化
- 型枠の再利用に限界がある場合、プレキャスト化で効率的に施工
- 工期短縮と品質安定化に貢献
7. まとめ:ワッフルスラブによる長スパン設計の可能性
ワッフルスラブは、単なる構造部材ではなく、意匠性・機能性・施工性を総合的に向上させる床構造です。従来の梁スラブ構造やボイドスラブと比較しても、多くの場面で優位性を発揮します。
設計段階での計画調整と、施工段階での品質管理をしっかり行えば、長スパン床の選択肢として非常に有力です。今後、RC建築や混構造建築、さらには環境配慮型建築においても、ワッフルスラブの活用はますます広がっていくでしょう。


