RC造スラブ厚さの設計基準と実務判断
目次
1. はじめに:RC造スラブ厚さの重要性
鉄筋コンクリート造(RC造)のスラブは、建物の床や屋根を形成する最も基本的な構造要素のひとつです。スラブ厚さは、単なる寸法ではなく、構造安全性・居住性能・施工性・コストに直結します。厚さが不足すればたわみやひび割れが増大し、過大になれば自重増加による構造負担やコスト増を招きます。そのため、設計基準を理解した上で、用途や条件に応じた実務判断が不可欠です。
2. スラブ厚さに関する設計基準
建築基準法・関連規定
建築基準法そのものには直接的なスラブ厚さ規定は少ないですが、耐火性能や安全性に関連する条項が存在します。実務では建築学会(AIJ)やJASS 5の指針が基準となります。
JASS 5・学会指針の標準値
日本建築学会のRC構造計算規準やJASS 5には、スラブ厚さの目安が示されています。例えば、一般的な住居用スラブでは120mm以上、事務所や学校では150mm以上が推奨されることが多いです。
最小スラブ厚さの目安
学会指針では、かぶり厚と鉄筋径を確保しつつ、最小厚さは100~120mmを下限とするのが一般的です。ただし、大スパンや高荷重用途ではさらに厚さを増す必要があります。
3. 構造設計上の考慮点
曲げ耐力・せん断耐力
スラブ厚さは曲げ耐力・せん断耐力に直結します。薄いスラブでは耐力不足となり、ひび割れ進展や破壊につながる可能性があります。
たわみ・振動制御
スラブは居住性を確保するため、たわみ量をスパン/250以下に抑えるのが目安とされます。特にオフィスや教室など人の集まる空間では振動制御の観点も重要です。
配筋との関係
スラブ厚さを決める際は、鉄筋径と必要かぶり厚を確保する必要があります。特にD13以上の鉄筋を用いる場合は、最低でも120mm程度の厚さが必要となります。
4. 使用条件による実務判断
用途別の厚さ傾向
- 住宅:120~150mm程度
- 事務所・学校:150~180mm程度
- 駐車場や機械室:180~250mm程度
荷重条件
積載荷重が大きい機械室や倉庫では厚さ増が不可欠です。通常荷重より1.5~2倍程度の設計厚さを検討します。
スパンによる調整
大スパンになるほど、厚さを増すか、補強梁・リブスラブなどの併用が必要です。
5. 施工現場での留意点
型枠精度とコンクリート打設
厚さ精度は型枠施工に依存します。型枠のたわみや打設時の振動で厚さが変動しやすく、±10mm程度の誤差管理が現場目標となります。
スラブ厚さ管理
施工図にはレベル基準を明確に記載し、墨出し・チェック体制を徹底することが重要です。
設計値との乖離防止
施工管理者は、打設後の実測確認を行い、設計厚さを確実に満たすよう監督する必要があります。
6. コスト・工期とのバランス
コストへの影響
スラブ厚が増すとコンクリート量・鉄筋量が増加し、型枠工事も大型化するためコストが上がります。
躯体重量と基礎への波及
厚さ増は建物重量増加を招き、基礎・杭への設計変更につながることがあります。
経済性とのバランス
「安全性を確保しつつ最小限の厚さで設計する」ことが、経済的で実務的な判断の要です。
7. 最新動向と技術的工夫
高強度コンクリートの活用
高強度コンクリートを用いることで、従来より薄いスラブでも耐力を確保可能です。
プレストレストスラブ
大スパン建物ではPCaスラブやプレストレストスラブを活用し、厚さ増を抑える工夫が行われています。
BIM・解析ソフトの最適化
BIMや有限要素法解析により、従来の経験則に頼らないスラブ厚さの最適設計が進んでいます。
8. まとめ
RC造スラブ厚さは、単に基準に従うだけでなく、荷重条件・用途・施工性・コストを総合的に判断して決定する必要があります。
- 設計基準を満たす最小厚さを押さえる
- スパン・荷重条件に応じて調整する
- 現場精度を確保し、実測で検証する
これらを徹底することで、安全性・経済性・施工性のバランスを取った最適な設計が可能になります。


