鉄骨造耐震ブレースの種類と選定基準
目次
1. はじめに:耐震ブレースの役割
鉄骨造における耐震ブレースは、建物の水平力に抵抗し、地震時の変形を制御する重要な要素です。柱や梁だけでは耐震性能が不足する場合に、ブレースが架構の剛性を高め、層間変形を抑制します。特に中低層建築においては、耐震性能を確保するうえで不可欠な構造要素といえます。
2. 鉄骨造耐震ブレースの主な種類
耐震ブレースには複数の形式があり、設計条件や意匠計画に応じて使い分けられます。
- X型ブレース:対角線状に配置され、最も剛性・耐力を発揮しやすい形式。
- V型・逆V型ブレース:開口を確保しながら耐震要素を配置でき、居住性や設備計画に配慮可能。
- K型ブレース:柱中央にブレースを接合し、開口部を大きく取りやすいが、局所的な応力集中に注意が必要。
- Σ型やその他特殊ブレース:意匠性を重視した建築や特殊用途の建物で採用されるケースがある。
3. 各ブレース形式の特徴とメリット・デメリット
- 剛性・耐力・変形性能:X型は剛性が高いが開口制約が大きい。V型は居住性を確保できるが、非対称変形が生じやすい。
- 意匠設計・設備計画:ブレース配置は室内空間や窓の位置に直結し、意匠や設備との調整が不可欠。
- 施工性やコスト:単純な形状のX型は施工性が高くコストも抑えやすいが、特殊形状は加工費・施工費が上昇する。
4. ブレース材の選定基準
設計段階で考慮すべき基準は以下の通りです。
- 建物用途・規模・構造計画:オフィスビルや商業施設では空間効率が重視される一方、工場では剛性重視でX型が多用される。
- 床面積効率・意匠性:居住性や窓面積を確保する必要がある場合、逆V型やK型が選ばれることが多い。
- 法規・設計条件:建築基準法や構造設計指針に則り、必要耐力・層間変形角の制限を満たすことが必須。
5. 実務での選定ポイント
実務における選定は単なる形式比較ではなく、総合判断が必要です。
- 設計初期段階での配置検討:建築計画と同時進行でブレース配置を検討し、後工程での調整コストを低減。
- 構造解析に基づく性能比較:解析モデルで複数案を検討し、耐力・変形・塑性エネルギー吸収性能を比較。
- コスト・工期・施工性:鉄骨加工の難易度や溶接量を踏まえ、経済性を確保した選定を行う。
6. 最新の耐震ブレース技術動向
耐震ブレースは従来型だけでなく、近年では高度な制震技術と融合した形式も普及しています。
- 履歴型ダンパー:地震エネルギーを効率的に吸収し、構造体の損傷を抑制。
- 座屈拘束ブレース(BRB):芯材を拘束材で覆うことで座屈を防ぎ、安定した耐力を確保できる。
- 制震・免震技術との組み合わせ:高層ビルや特殊建築で採用され、居住性向上と構造安全性の両立を実現。
7. まとめ:設計者が押さえるべき視点
耐震ブレースは建物の構造安全性を大きく左右する要素です。設計者は以下を意識する必要があります。
総合的判断:性能・コスト・施工性の三要素をバランス良く評価し、建物に最適なブレース形式を導くことが重要。
耐震性能と建築計画の両立:剛性確保だけでなく、空間利用効率や意匠性との調和を意識。
メンテナンス性・改修容易性:将来的なブレース交換や補強を想定し、施工性の高い配置を選択。


