木造建築でのCLT活用と設計ポイント

1. はじめに:CLTが注目される背景

近年、建築分野では環境配慮や脱炭素への取り組みが加速しており、再生可能資源である木材の活用が改めて注目されています。特に、直交集成板(CLT:Cross Laminated Timber)は、大規模・中高層建築にも対応できる構造性能を有しており、「木造建築の新しい可能性を切り拓く素材」として位置づけられています。国内でも公共建築や集合住宅での採用事例が増加しており、木造建築の新たな選択肢として市場で存在感を高めています。

2. CLTの基礎知識

CLTは、木材のラミナを繊維方向が直交するように積層・接着したパネルで、面材としての強度や安定性が特徴です。集成材が「線材」、LVLが「方向性のある板材」であるのに対し、CLTは「面材」として大きな剛性を持ちます。これにより、大スパンの床・壁を構成でき、設計自由度が広がります。一方で、重量が増すため搬送や施工に注意が必要となります。

3. CLTを活用した設計のポイント

CLTを用いる際には以下の点に留意する必要があります。

  • 構造設計:壁式構造としての剛性を活かしつつ、耐震・耐風に対しては接合部のディテール設計が重要です。特に床の水平剛性を確保することで、建物全体の安定性が高まります。
  • 接合部設計:CLT同士や鋼材との接合には専用の金物を用い、力の伝達経路を明確化することが不可欠です。
  • 性能確保:防火性能については石膏ボードや仕上げ材で補強し、遮音・断熱性能は断熱材の併用で調整します。
  • 中高層化への工夫:階数が増す場合は、重量・変形・火災時の安全性を十分に検討する必要があります。

4. CLT建築の施工と実例

CLT建築はプレカット工場でパネルを製作し、現場で組み立てる「プレファブ工法」が主流です。これにより工期短縮・品質安定が可能となります。
実例として、公共施設(学校や庁舎)、集合住宅、ホテルなどに採用されており、木質空間の快適性と環境配慮を両立した建築が実現しています。大規模化に伴い、クレーンを用いた施工計画や現場でのジョイント処理が成功の鍵となります。

5. 法規制と認定制度

日本においては、建築基準法に基づき、2016年以降CLTの使用に関する告示が整備されました。また、JAS規格により品質基準が明確化され、設計や施工の信頼性が向上しています。国土交通省の技術的基準や大臣認定の仕組みにより、設計者が安心してCLTを採用できる環境が整備されつつあります。

6. CLT活用の課題と今後の展望

一方で、CLTの普及には課題もあります。コスト面では鉄骨造やRC造に比べて割高になるケースがあり、流通インフラも発展途上です。しかし、国産材の利用拡大やサステナブル建材としての価値が高まる中、普及の後押しが期待されます。海外では中高層木造ビルが相次いで建設されており、日本でも今後の制度改正や技術革新によって採用事例がさらに増えると見込まれます。

7. まとめ

CLTは、木造建築の新たな地平を切り開く建材であり、環境配慮・設計自由度・施工性の観点から大きな可能性を秘めています。設計者や施工者は、その性能を最大限に引き出すために、接合部設計や防火・遮音性能の確保といった実務的ポイントを押さえることが重要です。今後、技術の成熟と制度整備が進むことで、木造建築の選択肢としてCLTはさらに存在感を増していくでしょう。