鉄骨造における耐火区画設計の基本
1. はじめに
鉄骨造は高層建築や大スパン構造に多用され、構造的な自由度や施工性に優れる一方で、火災時には鋼材が急速に加熱され強度を失うという課題を抱えています。そのため、建物全体の火災安全性を確保するためには、耐火区画の適切な設計と施工が不可欠です。耐火区画は火災の延焼を防ぎ、避難や初期消火活動の時間を確保する役割を持ち、法規制によってその設置が義務付けられています。
2. 耐火区画設計の基本概念
耐火区画設計の目的は大きく二つあります。
- 延焼防止:火災が建物全体に広がらないよう、階や部屋ごとに火を閉じ込める。
- 避難安全確保:煙や熱の拡散を抑え、避難経路を一定時間確保する。
鉄骨造では鋼材が熱に弱く、伝導による延焼リスクも高いため、熱伝達を抑えるための被覆・区画材の納まりが設計上のポイントになります。
3. 法規制と設計基準
日本の建築基準法では、用途・規模・建物の階数に応じて耐火区画の設置が求められます。代表的な要件は以下の通りです。
- 耐火構造・準耐火構造:主要構造部に耐火性能を付与する義務。
- 区画の設定:一定面積ごとに防火区画を設け、竪穴(階段室・吹抜け)には防火区画を貫通させない。
- 開口部制限:防火区画に設ける扉やシャッターは、国交省告示に準じた耐火設備を使用すること。
また、JISや国交省告示に基づく試験規格を満たした材料・製品を使用する必要があります。
4. 鉄骨造における耐火区画の設計ポイント
- 階ごとの区画計画
各階を水平に分断し、火災が上下階に拡大するのを防止します。特に吹抜けやエレベーターシャフトは火災伝播の経路となるため、重点的に検討します。 - 開口部・貫通部の納まり
ダクト・配管・電線などの貫通部は火災時に隙間から炎や煙が漏れるリスクがあるため、防火区画貫通処理材を用いて確実に閉塞します。 - 設備シャフトの計画
シャフトは複数階にわたり火災を広げる危険性があるため、各階で防火区画を設け、ケーブルや配管の延焼を防止する必要があります。
5. 施工上の留意点
- 耐火被覆材の選定と施工管理
鉄骨の被覆にはロックウール吹付、耐火被覆板、発泡性塗料などが用いられます。施工時には厚さや密着度を確実に管理しなければ、所定の耐火性能を発揮できません。 - 隙間処理とシーリング材
防火区画の隙間は火炎や煙の通り道となるため、耐火認定を受けたシーリング材を使用することが不可欠です。 - 施工トラブル事例
実務では「被覆材の欠損」「配管更新時の貫通処理忘れ」などが多発します。竣工後も定期点検を行い、不備があれば即座に補修する仕組みが求められます。
6. 最新技術と今後の展望
- 新素材・工法
近年は発泡性耐火被覆材や軽量高耐久のボード材が登場し、省施工化と耐久性向上が進んでいます。 - BIM活用
耐火区画をBIMで三次元的に可視化し、設備貫通や被覆範囲を事前に検証することで、施工ミス防止やコスト削減に寄与しています。 - 将来展望
今後はAIによる火災シミュレーションやIoTセンサーによる区画状態モニタリングなど、設計と運用の両面で高度化が期待されます。
7. まとめ
鉄骨造における耐火区画設計は、延焼防止・避難安全・法規制順守を柱に据えて計画する必要があります。特に鉄骨の熱伝導性や貫通部処理など、構造特有の課題に対応する設計・施工が重要です。最新技術を活用しつつ、現場での確実な納まりと維持管理を徹底することが、建築物の火災安全性を大きく左右します。


