RC造耐久性向上のための被り厚設計
目次
1. はじめに
鉄筋コンクリート(RC)造は、建築・土木構造物に広く用いられる耐久性の高い構造形式です。しかし、その寿命を左右する重要な要素の一つが「被り厚」です。被り厚は鉄筋を覆うコンクリートの厚さを指し、外部環境から鉄筋を保護する役割を担います。被り厚が適切に確保されていないと、鉄筋腐食や中性化による劣化が進行し、構造耐力の低下や維持管理コストの増大につながります。本稿では、被り厚設計の基本から最新の技術動向までを整理し、RC造の長寿命化に向けた実務的な視点を提供します。
2. 被り厚設計の基本概念
被り厚とは、鉄筋表面からコンクリート外面までの距離を指します。主な機能は以下の通りです。
- 鉄筋腐食防止:コンクリートのアルカリ性が鉄筋を不動態皮膜で保護するため、一定の厚みが必要。
- 中性化・塩害対策:中性化や塩化物イオンが鉄筋に到達するまでの時間を延ばす効果。
- 耐火性能確保:火災時に鉄筋を高温から保護し、構造耐力を保持。
- 構造安全性:剛性・耐力を発揮する上で必要な設計要素。
被り厚は単なる「厚み」ではなく、RC構造の耐久性全体を左右する根幹的な要素です。
3. 建築基準法・各種指針における被り厚規定
日本の法規・指針では被り厚の最小値が定められています。
- 建築基準法・施行令:一般部材における最小被り厚を規定。
- JASS5(日本建築学会仕様書):環境条件に応じた数値を提示。
- JCI指針・AIJ指針:塩害・中性化を考慮した耐久設計法を提示。
たとえば、屋内梁・スラブでは30mm程度、屋外柱や基礎では40~60mm以上が求められるケースが一般的です。用途や環境条件に応じた適切な選定が不可欠です。
4. 被り厚不足が引き起こす劣化と不具合
被り厚が不足すると以下の問題が発生します。
- 鉄筋腐食による膨張・ひび割れ
- 剥離や剥落の進行
- 耐力低下・耐震性の喪失
実際の現場では、型枠の精度不足や配筋ずれにより、所定の被り厚を確保できない事例が散見されます。調査では、中性化試験や塩害試験において、被り厚不足の構造物は劣化進行が顕著に早いことが確認されています。
5. 被り厚設計における考慮要因
被り厚の設計では以下の条件を考慮する必要があります。
- 使用環境:屋外・海岸部・寒冷地などの外的要因
- コンクリート強度・配合:水セメント比や密実性による耐久性の違い
- 耐用年数設定:50年・100年といった設計寿命に応じた厚さ設定
単に基準値を満たすだけでなく、ライフサイクルコストを見据えた設計が重要です。
6. 施工段階での被り厚確保の工夫
設計上適切でも、施工時に確保できなければ意味がありません。代表的な工夫としては:
- スペーサーブロックの適正使用:樹脂・モルタルスペーサーを部材位置に応じて配置。
- 型枠・配筋精度管理:振動や作業時のずれを防止。
- 測定方法:被り厚計やX線検査による確認を実施。
施工管理における精度確保が、耐久性に直結します。
7. 耐久性向上のための最新技術
近年は新しい技術も登場しています。
- 表面被覆材・浸透性吸水防止材:コンクリート表面からの水・塩化物イオン侵入を防ぐ。
- 高性能コンクリート・混和材:高強度・高密実なコンクリートで鉄筋保護性能を強化。
- IoT・AIモニタリング:打設後の被り厚や中性化進行をセンサーで常時監視。
これらを組み合わせることで、設計耐用年数を大幅に伸ばすことが可能になります。
8. まとめ
被り厚設計は、RC造の耐久性と寿命を左右する基本要素です。法規や指針に基づいた数値設定に加え、施工精度の確保、環境条件への対応、最新技術の導入が総合的に求められます。設計・施工・維持管理が一体となったアプローチにより、RC造建築物は長期にわたり安全で信頼性の高い性能を維持できるのです。


