デッキプレート床の施工手順
目次
1. はじめに:デッキプレート床とは何か?
デッキプレートとは、鉄骨造(S造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)でよく用いられる鋼製の床材で、コンクリートスラブの型枠を兼ねる役割を持ちます。型枠工事が不要になることで工期短縮・省力化が図れるため、都市部の中高層ビルを中心に広く普及しています。
特に「合成スラブ構造」では、デッキプレートが鉄筋の一部として構造的に活用されるため、床厚のスリム化や部材の軽量化に貢献する構造的利点もあります。
2. デッキプレートの種類と選定ポイント
デッキプレートは以下のように分類されます。
- ハット形・波形(Wデッキ等):一般的な型枠用途。形状により剛性や施工性が異なる。
- 合成スラブデッキ:デッキが鉄筋の役割を兼ねる。スタッドジベル併用が必須。
- 非合成スラブデッキ:型枠としてのみ使用。鉄筋は別途配筋が必要。
選定の際には以下の条件を考慮します:
- スパン長とたわみ許容値
- 耐火被覆やスラブ厚
- 打設荷重への耐性
- 他部材との納まりと施工性のバランス
3. デッキプレート床の基本構成と施工フロー全体
施工は以下の流れで進行します。
- デッキプレートの敷設(支持梁の上に仮設)
- スタッドジベル溶接と鉄筋配筋
- コンクリート打設と養生管理
各ステップでの正確な手順と品質管理が、構造安全性と仕上がり精度を左右します。
4. 各工程の詳細手順と注意点
4-1. デッキプレートの敷設
- 梁上に仮置きし、番線締め・溶接・クリップで固定。
結束や溶接でしっかりと固定し、作業中の転倒やズレを防ぎます。 - 重ね代は**メーカー推奨値(通常30mm以上)**を厳守。
不適切な重ねがあると、漏水や段差の原因になるため、仕様通りに確保することが重要です。 - 端部はキャップやベント処理でコンクリート漏れを防止。
端部の開口や継ぎ目は、止水キャップやベントでしっかり処理することで、型枠漏れやバリの発生を抑制します。
4-2. スタッド溶接・補強筋の設置
- スタッドジベルは母材への完全溶込みが必要。外観検査+引張検査で確認。
施工後の目視と検査を通じて、荷重伝達性能が確保されていることを確認します。 - スタッド配置ピッチ・径・高さは構造図の指定通りに。
構造計算に基づく設計値に沿った施工でなければ、合成スラブの性能が発揮できません。 - **補強筋(配力筋や折返し筋)**の定着長さやかぶり厚さも重要。
構造安全性だけでなく、コンクリートとの付着やひび割れ抑制の観点からも、配筋精度が求められます。
4-3. コンクリート打設
- デッキ上は歩行用足場を敷設。過荷重を避ける。
デッキプレートは型枠ではあるが構造体ではないため、作業員の歩行荷重や機材荷重を分散させる処置が必要です。 - 打設は**ポンプ圧送→スランプ確認→締固め(バイブレーター)**の順で丁寧に。
一連の作業工程を標準化することで、品質と打設スピードの両立が可能になります。 - 初期硬化後は**適切な養生(水湿布、散水、養生シート)**で品質を確保。
ひび割れや表面強度の低下を防ぐため、硬化初期からの湿潤状態保持が必須です。
5. 施工上のトラブル事例と対策
- デッキたわみ・破損
仮設支保工不足やスパンオーバーが主な原因。設計スパン内での支持を徹底し、必要に応じてサポート材を追加します。 - スタッド溶接不良
母材の油分・錆などの除去不足による不着が多く、事前の表面処理と施工後検査が不可欠です。 - コンクリート漏れ・水たまり
端部処理やジョイントの不完全さから生じやすく、防水処理やベントの確実な施工が鍵となります。
6. 品質管理と検査項目のチェックリスト
- スタッド溶接部検査
外観検査および引張検査を計画的に行い、母材との接合性を確認します。 - 鉄筋配置確認
図面通りのピッチ、定着長さ、かぶり厚さをスラブごとにチェック。帳票記録も残します。 - コンクリート管理
スランプ試験、打設気温、養生方法、打設記録などをすべて文書化し、品質証明とします。
7. まとめ:安全・品質・効率を両立する施工のポイント
- 鉄骨→デッキ→配筋→打設の各工程間の情報共有と段取りが最も重要です。
- BIMやプレカットによる干渉チェックや部材精度向上も活用し、施工トラブルを未然に防ぐ仕組みを整えましょう。
- 経験者から若手へのOJTやマニュアル整備も、長期的な現場力向上に直結します。


